【コロナ禍を乗り越える 宿経営サバイバル塾 11】既成概念を捨てよ 全旅連ポストコロナ調査研究委員会


 今年、福島は東日本大震災と原発事故から10年目という節目の年で、東北DCや東京オリ・パラの開催と相まって、飛躍の年となるはずだった。しかし、新型コロナ禍が長期化する中、政府の各種支援策を活用して事業の継続は辛うじて維持しているものの、多くの施設から悲鳴が聞こえてくる。

 県内施設の経営状況の実態調査を行い、集計データ持参で窮状を県や県議に訴えた結果、感染防止対策への支援金に併せ、マイクロツーリズム等、前向き投資への支援金制度の拡充となった。各施設は、これらの支援策を余すことなく活用し、緊急事態宣言明けに備え、安心安全を提供できるよう、今まで以上に感染防止対策を徹底し、ハード、ソフト両面を整備していただきたい。

 施設の充実は必須だが、コロナ禍以前のインバウンド需要回復は当分見込めず、対象は訪日外国人から日本人にシフトするだろう。この争奪戦に巻き込まれ負のスパイラルに陥らないよう、各施設、経営者自らが既成概念を捨て、前例のない斬新で独創的なプランの創出に取り組んでほしい。柔軟な考えを持った若手スタッフのアイデアを取り入れることも一案だ。多様性を認め、新たな客層の獲得に向け、まずは失敗を恐れず挑戦してみよう。

 プラン作成に当たっては、地元とタイアップすることで一気に視野が広がる。

 コロナ禍では飲食や運輸業も困窮している。飲食店やタクシー会社をはじめ、地域の商店や各種グループとの関係性は密に保っておきたい。さらに、持続していくためには、ゲストに満足していただけることはもちろんだが、施設も、地域も、担当者も、楽しく、しっかりもうけられるような仕組みができたら最高だ。地域資源を大いに活用し、顧客との関係性を築き、自館や地域のファンを創出する。そのために県民割等、各種観光需要喚起策を使い捨てにせず上手に利用していこう。

 同時に、インバウンドに関しては、再開を見据え、SNS等で現地と連絡を密にし関係性を保ちながら、来るべき復活に備えていきたい。(委員・小井戸英典=福島県いわき湯本温泉・旅館こいと)

    ◇  ◇

 【委員会より】

 2020年春からの新型コロナウイルス感染症拡大の第5波もようやく鎮静し始めています。今年に入り、ワクチン接種が促進され、行動制限の緩和が話題になってきました。

 ポストコロナ調査研究委員会でも政府・自治体への「緊急要望」をまとめ、全国の組合員と活動を始めています。個々の宿泊施設や地域でも行動制限の緩和への準備が求められます。

 小井戸委員の指摘のように地域の状況を再把握することは非常に重要な視点だと思われます。宿泊施設は地域観光の重要な基盤です。地元とのタイアップという取り組みは、新しい可能性を秘めていることでしょう。

 
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