各種値上げに伴うプライシング戦略の見直しについての最終回であるが、今号では具体的な実施方法について、いくつか述べていきたい。
まず、値上げにおいて一番大事なことは「これ以上の価格には下げない!」という経営者の強固な意思なのである。これが言うは易し、行うは難しで難しい。特に売り上げ担当者は稼働が悪いと、どうしても目先の売り上げ欲しさに、すぐに値下げを実施してしまう。したがって、経営層が明確に1泊2食1万4300円以下では売らないと明確に宣言してしまうことが大事なのである。
稼働が上がらずに不安な時は、安易に値下げに走るのではなく、他に原因がないかをまずは考えるべきである。アクセス数が低下しているからではないか?WEBに在庫がしっかりと出ていないのではないか?など。少なくとも値下げする場合は、その値下げで競合からの流入が見込めて、稼働がどれくらい増えるのかという仮説が必要である。
値上げの次なる戦術としては、レベニューマネジメントがある。もはやスタンダードになりつつある手法なので詳細は割愛するが、要は需給バランスでの価格設定である。需給バランスで価格を設定する以上は、予約状況、需要予測、競合状況の少なくとも三つの視点で見ることが大事であるので、レベニューマネジメントを導入する際はこの三つの視点を見る訓練が必要である。レベニューマネジメントは値上げに対して、いち早く効果が出やすい手法であるが、逆も然りであるので、導入の際はルールを設けることが大事である。
レベニューマネジメントの過度な実施は宿の本質的な価値とのバランスを崩すリスクもあるので、やはり本質的には宿の価値そのものを上げることが求められる。これが第3の手法である。潤沢な資金があり、すぐに改装ができるのであれば値上げもできるが、多くの宿ではそうはいかないため、限られたリソースを振り分ける必要がある。そこで、わが宿はどのターゲット層にアプローチしていきたいのかを明確にする必要がある。そして、それをハード面、ソフト面、PR面、全てで表現する必要がある。
夏に向けてさらに物価高になるとも言われている状況である。良い機会だととらえて自施設のプライシング戦略について見直すことをお勧めする。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)