新型コロナウイルスの話題が連日報道されており、観光業界においても多大な影響を与えている。特に今年度は2019年8月に韓国の訪日客数が前年対比で50%近くダウンするというショッキングな数値が発表され、韓国人ゲストを主たる集客ルートとしていた施設は大きなダメージを受けることとなった。そして、その傷が癒えぬうちに、今度は中国という今や訪日外国人の中で、最大の比率である国からの観光客が激減することとなったのである。
当然、宿泊業界においても中国人ゲストのツアーのキャンセルなどが頻発し、大きなダメージを受けた施設が多々あったことも事実であるが、一方ではほぼ影響を受けることもなく、1月、2月と推移している施設もあった。その違いを今号では考えていきたいと思う。
端的に言ってしまえば、その秘訣(ひけつ)は「チャネルポートフォリオ」であった。当然のごとく、韓国ショックや新型コロナウイルスによる影響で海外ゲストの減少はあったのだが、海外ゲストが減少した分、国内の予約が増えて、結果売り上げを落とすことなく推移できたのである。
そのような施設は、普段から国内外はもとより、県内外(地元客とそれ以外)、ネットとリアル、ネット内の各OTA比率においてさえも、各社のパワーバランスを絶妙なさじ加減でコントロールしていた。どこか一つの集客ルートに頼ると、そのルートに何かがあった場合、あまりにも大きな影響を受けてしまうため、リスクヘッジを兼ねたチャネルポートフォリオをしていたというわけである。まさに経営でいうところの「最大の取引先でも売上高の30%以内に抑えよ」という原理原則である。
今回のように何か大きな出来事により、ある集客ルートからの送客が期待できなくなるというケースは今後も起こり得る。そのためにも、普段から自施設のチャネルポートフォリオを考えて、最適な形で組んでおくように考えることをお勧めする。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)