OMOで「実感価値」提供 JTB執行役員 Web販売事業部長 池口篤志氏に聞く


JTB執行役員 Web販売事業部長 池口篤志氏

サイトは使いやすさを追求

 ――Web販売事業での23年度の取り組みは。

 「Web販売は『JTBホームページ』、国内旅行の『るるぶトラベル』、訪日旅行者向けの『JAPANiCAN』の自販サイト、さらに提携サイトでの取り組みがあるが、これらのトータルで前年度比2桁以上の伸びとなった。コロナ前と比べても同じぐらいの数字まで戻ってきている。前年の全国旅行支援による旅行者増の反動などを心配はしていたが、マーケットが盛り上がってきたことで比較的好調に推移した。数字的には回復の兆しが見えてきている」

 「昨年度は各サイトのコンセプトを明確にしていくことを命題に取り組んだ。JTBホームページは『旅に安心とこだわりを』、るるぶトラベルは『欲しいが見つかる簡単宿泊予約』をコンセプトとしている。JTBホームページでは、お客さまの使いやすさ、利便性の追求のほか、お客さまに魅力を伝えるための情報の見せ方の工夫などを行った。特筆すべき点はJTBアプリの機能向上。使いやすくなってきたということで、外部評価の点数も上がってきている。われわれは3年ぐらいの間、『OMO』の強化に取り組んできたが、お客さまと店舗スタッフとのやりとりがアプリ上でできるよう機能改修を進めてきた結果、アプリの活用がかなり進んできた。るるぶトラベルは、最短で4画面の遷移で予約ができる形にしたが、引き続き簡単宿泊予約を実現させていく。また、サイト内でQRコード決済『PayPay』への対応も開始した。訪日については昨年11月にTrip.comとの協業で『JTB Inbound Trip』という会社を立ち上げて、中国を中心とするアジア圏内への取り組みを強めている」

 ――24年度のWeb販売の市場の見通しは。

 「国内旅行者数は前年を少し下回る95~97%程度、訪日旅行者数は110~120%程度と予測している。そのような状況の中、われわれとしては、最低でも市場の伸びを上回らなければいけないと考えており、必要な取り組みを進めていく」

 ――具体的な取り組みは。

 「マーケットの状況や反応を見ながら必要な開発や商品強化を進めていきたい。Webでしっかりとお客さまに対応していかなければならないが、われわれはオンライン専門の会社ではないため、OMOを軸としてお客さまが使いやすいチャネルを提供することに徹底的にこだわっていきたい。何度も行ったことがある場所に行くときはオンラインで簡単に予約するという人が多いが、初めて行く場所や、自分でお金を出す時は失敗したくない、現地の情報についてもいろいろ相談したいということで若年層も含めて店舗やコールセンターに多くのお問い合わせをいただくケースも増えている。われわれはWebだけでなく、コールセンターやJTBリモートコンシェルジュなども含めてさまざまなチャネルを持っているため、お客さまに合う形で商品の提供、販売ができるようにする必要がある。それぞれのチャネルを磨き上げるとともに、それらがしっかりと横串でつながっていることが重要だ。OMOでJTBが目指す『実感価値』をお客さまにしっかりと提供できる1年にしたい」

 「JTBホームページの取り組みは、これまで通り、お客さまサイトの使いやすさを磨き上げていくことに尽きる。るるぶトラベルついては、アプリが今までなかったが、Android版を4月にリリースした。このアプリを軸にしてお客さまへ旅ナカや旅マエ、日常の中で『こんな旅行はどうか』という通知をするなど、プッシュ型の提案ができるような仕組みも今後整えていきたい」

 「JTBパブリッシングが旅行ガイドブック『るるぶ』の旅行情報を提供する『るるぶ+(プラス)』というメディアサービスを立ち上げたので、そのサービスとも連携をして、るるぶサイトやアプリの中で情報を探しに来たお客さまがストレスなく予約ができる形に整えていきたい」

 ――旅ホ連と連携した取り組みは。

 「23年度は旅ホ連の皆さんとタッグを組んで、販売促進を含めて地域活性化の観点でいろいろな活動をした。24年度も同様の形でやっていきたい。宿泊施設ごとに人手不足やインバウンド客への対応、エリアでのオーバーツーリズムなどいろいろな課題がある。われわれは個々の宿泊施設の課題をしっかりと聞いて、各施設の実情に合う形で販売を展開していきたい。OMOの取り組みを生かし、店舗のお客さまに対して、告知はWebで行うが申し込みは店舗で受け付けるなど店舗とWebが融合した取り組みを行う。また、『インバウンドのお客さまよりも日本人のお客さまに力を入れたい』などの施設の皆さまのニーズに合わせることを徹底的にやっていきたい。そういった声を各地のDMC支店や仕入商品事業部のメンバーにぜひ伝えていただきたい」

 「一方、増売活動については、これまで通りさまざまな情報提供や、キャンペーン展開、クーポン施策などにご協力をいただきたい」

 「インバウンドに関しては、コロナ禍を経て、JTBサイト内などにプラン展開を再開いただいた旅館・ホテルがまだ多くなく、現在、訪日インバウンド向け商品が足りていないという課題がある。コロナ前の半数強程度のラインアップのため、いろいろな理由があると思うが、訪日のお客さまに訴求できる機会なので、まだ再開されていない場合はご協力いただきたい」

 

JTB執行役員 Web販売事業部長 池口篤志氏

 

 
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