JSTO、果物の外客売り込み拡大を検討


 日本各地の果物を訪日外客により多く購入してもらうため、ネックとなる問題を解決しようと、ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)を中心に対策が進められている。日本の果物は質の高さや味のよさが外国人客にも評判だ。ただ、出国の際に検疫で時間がかかったり、どの品物を自国に持ち込めるのか認知されていなかったりなどの問題がある。協会などはこれらの問題解決に向けた検討会を定期的に開いており、来年3月にも農林水産省に提言する方針だ。

 「特に東南アジアの人に日本のフルーツは人気です」と、JSTO事業企画部ディレクターで、JTBとJCBの合弁会社J&J事業創造開発本部マネージャーの浅倉泉氏。日本の果物は糖度が高く、おいしいと評判。台湾人にはりんご、タイ人にはメロンといちごとかき、香港人にはいちごの人気が高いという。飛行機に乗る前の荷物整理で、国際空港のごみ箱周りが空き箱で占領されているのも日常の風景という。

 外国人に人気の日本の果物だが、より多く販売するために解決すべき課題がある。一つが検疫だ。

 果物を含めた植物を海外に持ち出す場合、受け入れる国ごとに規定があり、「無条件で持ち込めるもの」「日本の植物検疫証明書があれば持ち込めるもの」「受け入れ国の輸入許可証があれば持ち込めるもの」「持ち込みを原則禁止しているもの」がある。

 例えば日本のりんごを海外に持ち出す場合、相手国が香港やシンガポールなら無条件に可能。インドネシアは日本側で輸出植物受検が必要。中国や台湾は原則持ち込むことができない(別表)。

 さらにこの規定は観光客が手荷物などで持ち出す「携帯品」の場合で、ほかに国際宅配便で送る場合の「貨物」、国際郵便物で送る場合の「郵便物」で別の規定がある。

 相手国が日本の植物検疫証明書を必要とする場合、果物を運び出す外国人観光客は日本側で検疫を受けなければいけない。ただ、「検疫にかかる時間が1人20〜30分と長い」(浅倉氏)。申請書に英語で必要事項を記入し、検疫官から原則目視で品物のチェックを受け、合格した場合に証明書が発行される。ここまでに平均20分以上を要する。

 申請書は果物の種類、品種ごとに記入しなければならない。例えばメロンの場合、夕張メロンとアムスメロンを持ち出す場合は申請書を2枚書かなければならない。

 植物防疫所は全国の主な空港や港、市中にある。空港では目立たない場所に位置していたが、最近は大空港では利用者が利用しやすい出発ロビーにも新設するなど、検疫の時間短縮に向けた取り組みが進められている。ただ、抜本的な問題解決には至っていない。

 一方、販売の現場では、販売する側、購買側双方で果物を持ち出す場合の国別の規定が認知されていないことから、「売る側は何となく『売ってはいけない』と思い込んでしまい、販売にブレーキがかかっている。自国に持ち込みができない人に対しても『その場で食べるならOK』などのセールストークができるが、それがうまくできていない」(浅倉氏)状況だ。

 問題解決に向けて農林水産省は、「おみやげ農産物植物検疫受検円滑化支援事業」をこのほど開始した。JSTO会員らによる検討会を今年3月からおよそ1カ月に1度の割合で実施。検疫の円滑化と、国や商品ごとに異なる持ち出し規定の認知拡大策を検討している。

 規定の認知拡大に向けては、リーフレットを作成して海外の日本政府観光局(JNTO)事務所やJTBなど旅行会社の支店などに配布している。

 検討会では来年3月までに提言をまとめ、農水省に提出する。

 政府は日本の農林水産物と食品の輸出額を2014年の6117億円から2020年までに1兆円にする目標を掲げている。また昨年10月に外国人旅行者向けの免税制度が改正され、食料品なども5千円超50万円以下の購買(1人1日1店舗当たり)で消費税が免除となった。果物を含めた日本の土産品の販売に追い風が吹いている。

 JSTO事業企画部ディレクターでJ&J事業創造開発本部部長の吉田晶夫氏は「果物の場合は(海外ブランド品などと異なり)支払われたお金のほとんどが日本に残る。日本の産物を多くの外国人客に買ってもらうことが地方創生にもつながる」と話している。

 
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