日本旅行業協会(JATA)は11日、「民泊の規制緩和に対する考え方について」の要望書を田川博己会長名で田村明比古観光庁長官に提出した。特区での外国人に対する民泊には賛意を示したうえで、旅行業者が旅行業法に則って民泊を取り扱える仕組みの整備を求めた。特区外での違法な民泊への取り締まりの徹底も要望している。
訪日外国人旅行者の急増により東京、大阪、京都などの大都市ではホテルを中心に宿泊施設の稼働が限界に達しており、宿泊料が高騰し、日本人観光客が宿泊できない状況も起きている。
このような実態を踏まえ要望書では「特区という特定の地域かつ外国人限定という前提で、民泊の取り扱いを行うことについては賛意を表す」と考えを示した。民泊では外国人旅行者の安心、安全の確保が最も重要と指摘し、旅行の質が担保されれば「リピーター増につながるとともに、旅行業者としても旅行業法に則った取り扱いを行うことができる」としている。
要望は(1)消防、食品衛生など、安心、安全を担保するルールの構築(2)国家戦略特区施行令および内閣府、厚生労働省が通知した「外国人滞在施設経営事業の円滑な実施を図るための留意事項」の周知徹底と遵守(3)消費者保護の観点から、滞在する施設の設置や管理に瑕疵があることによって外国人旅行者に損害が生じた時は、施設の提供者が賠償を確実に実施するルールの構築。地域(近隣)住民の理解を得るためのルール作りも求めた。
要望書の提出は、旅行業者が民泊をあっせんできる仕組みの整備を求めていくのが目的だが、「宿泊業界に対する支援の意味も込めている」(興津泰則JATA国内・訪日旅行推進部長)。
旅館業法に規定する旅館・ホテルなどは旅行業界にとって重要なパートナーだと述べ、民泊は「地方分散化や旅館業界への影響を考えつつ取り組みを行っていかなければならない」「事業用に供する施設を使用させる期間については、特区ごとの地域の宿泊施設の状況を考慮して設定してほしい」と訴えている。
また、「特区以外の地域における違法な民泊を防止する観点から、海外取次あっせん業者の規制や、施設の提供者に対する取り締まりの徹底も大変重要だ」として、住宅や賃貸マンションなどの空き部屋を有料で貸し出す違法な行為への取り締まりの徹底を求めた。