日本旅行業協会(JATA)は、環境省が東北地方の太平洋沿岸に設定を進めるロングトレイル「みちのく潮風トレイル」を活用して東北復興を支援する「JATAの道」プロジェクトに取り組んでいる。10月23、24日、本部役員や会員旅行会社の社員ら約60人がコースの南端に位置する福島県相馬市、新地町を訪問した。コース上や周辺の観光素材を視察したほか、コースを示す案内板を現地に寄贈した。旅行会社では今後、視察の成果を生かして旅行商品の造成を進める。
観光名所の潟湖、松川浦(相馬市)
日本旅行業協会(JATA)は、環境省が東北地方の太平洋沿岸に設定を進めるロングトレイル「みちのく潮風トレイル」を活用して東北復興を支援する「JATAの道」プロジェクトに取り組んでいる。10月23、24日、本部役員や会員旅行会社の社員ら約60人がコースの南端に位置する福島県相馬市、新地町を訪問した。コース上や周辺の観光素材を視察したほか、コースを示す案内板を現地に寄贈した。旅行会社では今後、視察の成果を生かして旅行商品の造成を進める。
みちのく潮風トレイルの設定は、東日本大震災からの復興を推進する環境省の「グリーン復興プロジェクト」の一環。コースの全長は青森県八戸市の蕪島と福島県相馬市の松川浦を結ぶ約700キロに及んでいる。
現在、相馬・新地エリアの約50キロをはじめ、八戸、久慈、宮古、釜石、大船渡などのエリアが区間開通。全長の半分ほどのコースが開通し、旅行者を迎えている。環境省では、来年度中の全区間開通を目指している。
JATAの道プロジェクトは、昨年4月にスタート。震災発生から10年の節目となる2021年3月までの7年間にわたって実施する計画。今回の相馬・新地訪問は、昨年10月の青森県八戸市・階上町訪問に続く2回目の現地活動となった。
眺望に優れた鹿狼山(新地町)
訪問団は、トレイルの一部区間を実際にトレッキングするなど、地元の観光・復興関係者の話を聞きながら観光素材を視察。低山ながら太平洋や蔵王連峰を眺望できる鹿狼山(新地町)、美しい景観を持つ潟湖で津波被害からの再生が進む松川浦(相馬市)、相馬野馬追の舞台の一つの中村城跡(同)などを巡った。
相馬市、新地町ともに、沿岸部は震災の津波で多数の犠牲者を出したほか、生活や産業のインフラに大きな被害が及んだ。インフラの復旧など新たなまちづくりが進んでいるが、海水浴などが再開できない観光業、試験操業にとどまっている沿岸漁業など、産業の復興には課題も多い。
訪問団を迎えた相馬市の立谷秀清市長は「震災、風評被害の一方で、復興に取り組む地域の姿が多くの人々を引き寄せている。交流人口の拡大、観光振興を通じた復興に向けて、市民を挙げて歓迎、おもてなししていく。旅行会社の皆さまにも協力をお願いしたい」。
新地町の佐藤清孝副町長は「復興は道半ば。インフラの復旧が進みつつある中で産業の担い手の育成が課題。観光では鹿狼山をメーンにした振興を進めている。海、山、里の魅力を中心にしたみちのく潮風トレイルに多くの旅行者をお迎えしたい」と語った。
JATAは視察や地元関係者との意見交換を行ったほか、トレイルのコースや観光スポットを示した観光案内板を相馬市に贈呈した。案内板は移動可能で、相馬市では観光情報の発信拠点「千客万来館」に設置したり、イベント開催時に会場に設置したりして活用する予定。
訪問団の団長を務めたJATA副会長で国内旅行推進委員長の戸川和良KNT‐CTホールディングス社長は「相馬、新地に旅行者を呼び込み、みちのく潮風トレイルを発展させたい。新しい東北観光の創造に向け、地元の皆さまと力を合わせて旅行商品づくりに取り組んでいく」と観光を通じた東北復興に改めて意欲を示した。
JATAの相馬・新地訪問には、環境省自然環境局国立公園課の岡本光之課長、同省東北地方環境事務所の堀内洋次長も参加した。
JATAが相馬市に案内板を贈呈(右は戸川JATA副会長、左は立谷相馬市長)