JNTO出展ブースで日本各地の旅行情報を求める参加者(香港ブックフェア)
2025年の訪日香港人数は約252万人となった。2024年と比較して6.2%減少したものの、訪日旅行者数では韓国、中国大陸、台湾、米国に次いで5位に位置する。人口約750万人という市場規模を考慮すると、人口当たりの訪日旅行者数は主要市場の中で最も高い水準だ。リピーターは全体の9割を占め、引き続き、重要な訪日市場であることは言うまでもない。
2025年の春から夏にかけて、日本における大規模地震に関する情報がSNSやメディアを通じて香港でも広く話題となった。これは、日本との心理的・地理的距離の近さという香港市場の特性を示す出来事でもあった。日本に関する報道やSNS上の情報は日常的に香港へ伝わり、多くの消費者が日本のニュースや流行をリアルタイムで把握している。当時の地震関連情報への大きな反応も、日本への関心の高さの裏返しと言えるだろう。
一方で、香港の旅行市場を取り巻く環境は大きく変化している。特に、2023年1月の中国本土との往来再開以降、わずか1時間以内でアクセスできる深 への「北上消費」が活発化したほか、長江クルーズや雲南省、新疆など中国各地への旅行需要も拡大している。
日本へのアクセスでは、2019年には香港から日本の17空港へ直行便が就航していたが、2026年8月現在は12空港にとどまり、減少分はいずれも地方空港である。中国国内を含めたデスティネーション間競争が一層激化している中、直行便の有無は旅行先選択に大きく影響するため、地方路線の回復は重要な課題となっている。
こうした環境の中で、日本の地方への誘客を進めるためには、訪日経験が豊富な香港人旅行者に対し、「次に訪れるべき場所とその理由」を地域ならではの魅力と結び付けながら、継続的に情報発信していくことが重要である。そのためには、その土地・季節ならではの体験に加えて、旅行者の趣味や嗜好に応える幅広い観点からの情報発信が求められる。
例えば、香港ではアニメや漫画、音楽など日本のソフトコンテンツの人気が高く、作品の舞台を訪れたいという声も多い。コンテンツと地域資源を結び付けた情報発信は、香港人リピーターに対する有効なアプローチとなり得る。また、スポーツへの関心も高い。サッカーなどのスポーツ観戦やスキー体験、マラソン大会といったイベント参加を目的とした訪日需要は、今後さらに地方誘客につながる可能性を秘めている。
リピーターが大半を占める成熟市場だからこそ、「何をしたいから、どこへ行く」という旅行者起点の発想で地域ならではの体験価値を訴求することが、さらなる地方誘客と旅行消費の拡大につながるだろう。

JNTO出展ブースで日本各地の旅行情報を求める参加者(香港ブックフェア)




