大型バスの前に並ぶ「ローカルクエスト」の参加者たち(2023年10月、兵庫県新温泉町)
「月に一度通う町」創出 新温泉町・全但バス
人口減少・少子高齢化が進む兵庫県北部の但馬地域で、全但バス(兵庫県養父市、村上宣人社長)は、居住地を問わずに地域に継続的に関わる「関係人口」の創出に力を入れている。一度きりの観光客に限らず、人と人とのつながりで訪れる人々を、自治体と連携して増やそうとしている。
当地の面積は東京都とほぼ同じ約2133平方キロメートルで、約14万人の住民が暮らしている。
「交通空白」の解消が各地で喫緊の課題となる中、全但バスは、高校生らの通学、高齢者の通院を中心とする路線バスの輸送需要が縮小していることに危機感を募らす。高速バスで大阪、神戸から観光客を呼び込んでも、1回だけの来訪になりやすく、広告などで発信し続けるのは費用負担が重いと判断している。
そこで、観光・旅行よりも地域との関わりが深くなり、繰り返し訪れてくれる可能性が高い関係人口に着目した。
鳥取県境に位置し、日本海に面する新温泉町。2023~24年度の2年間、地域の困りごとについて、町外からの来訪者が住民と共に考え、解決に向けて行動するという「ローカルクエスト」事業が展開された。クエストは探求、冒険の意。観光庁の「第2のふるさとづくりプロジェクト」に採択され、同町と全但バス、1人旅など「ソロ」に特化した企画を手がけるホーン(東京・中央区、松本直樹社長)が連携して取り組んだ。
具体的には、初級、中級、上級と難易度別のクエストが設定され、都市部からやって来た社会人たちが、農産物、海産物の収穫や森林の手入れ、地域行事のサポートにチャレンジした。高齢化で存続が危ぶまれていた朝市、各家庭で継承者不在で途絶えつつあった郷土料理などが、来訪者が手伝ったことで再起につながったという。冬の活動には、雪の降る日本海沿岸で、地元の高齢の女性らと一緒にわかめを取る姿もあった。
交通の面で、都市部から繰り返し通いやすくするため、月間定額でバスに乗れるパスを考案。大阪・梅田と新温泉町内の湯村温泉を結ぶ高速バスと町民バスに導入された。ただ、月に何度も利用する人は想定したほど多くなく、運賃の割安さを十分に感じてもらえなかったようだ。
参加者は京阪神を中心に、東京・首都圏や岡山などからも訪れた。初年度の23年度は延べで256人、翌年度は179人集まった。23年度の参加者が24年度の活動では企画側に回り、「月に一度、通う町。帰る町。」をキャッチフレーズに掲げて、新たな来訪者の呼び込みに精を出した。一部の参加者はそのまま地域に関わり続け、移住した人もいたという。
全但バスの小坂祐司常務は「『新温泉町の誰々さんに会いたい』という関係を作るのが目的だった。たくさんではないが、コアな人たちが来てくれた」と手応えを語る。
ローカルクエストはその後、新温泉町を中心とした取り組みに移行。一定期間、地域の活動を体験する「地域おこし協力隊」のインターン制度を活用し、14日間滞在する「2週間お試しプログラム」として続けられている。
(東京交通新聞)

大型バスの前に並ぶ「ローカルクエスト」の参加者たち(2023年10月、兵庫県新温泉町)




