日本旅行新宿法人営業部法人1部営業2課リーダーの米山幸輝氏に話を伺った。
米山氏が所属する新宿法人営業部は、主に東京都内の一般企業向けにMICE案件を取り扱う部署だ。法人1部・2部・3部のほか、自治体対応の部も擁し、営業人員は35~40人規模に上る。
法人1部は生命保険や自動車関連の企業を中心に、機械メーカーや飲食関連の企業など、幅広い業種業態の企業との取り引きを手掛けている。
コロナ禍でオンライン会議が普及した反動として、近年、企業需要はリアルなコミュニケーションへの回帰が顕著だという。「『やはりリアルの方がコミュニケーションが取れていいよね』と認識され始めてから、宿泊を伴って懇親会も設定する会議がまた注目されている」と米山氏は語る。
特に需要が増えているのがIT系企業だ。エンジニアを他社に派遣しているIT企業が、異なる職場の社員を一堂に集めて社員旅行を実施することで、普段顔を合わせないメンバー同士の交流を図るケースが増えている。自動車関連企業も「ここ最近盛り返してきている」という。
地方の温泉・観光地におけるMICEの事例として米山氏が挙げるのが、ある大手企業の新入社員研修だ。今年4月、北信越エリアにある旅館2棟を貸し切り、新入社員約300人による約2週間にわたっての合宿型研修を行った。

温泉・観光地で行われた同社が扱った新入社員研修
研修は終日行われ、マナー研修から自社製品の仕組みの習得まで、多彩なプログラムで構成された。食事は朝昼晩全てを施設が提供し、アルコールは期間中全面禁止。売店のアルコール販売やアルコール自販機も止めた。「学生の修学旅行でも同様に対応が求められることがあるが、施設の対応のおかげで研修に集中してもらう環境が作りやすかった」という。宿泊は3人1室の相部屋で、2週間固定のメンバー構成とした。
この研修は前年から同じ施設で続けられており、参加者からの評価は高い。「宿泊することで、仲間同士、より深い関係性を築けたというお声をいただいた」。最終日の夜は米山氏の演出・サービスで打ち上げ花火を行い、より思い出に残る研修になったという。
一方、施設側からも「(スキーシーズン後の)オフシーズンにこの規模の団体を頂けてありがたい」と、感謝の声が上がっている。
100名以上の参加者が一斉にノートパソコンを使う大型会場でも、延長コードを全テーブルに配備し、電源容量やWi―Fiの増強も行った。また、自社の大型製品も会場へ運搬し、実習で使用した。「旅行会社なのかと思うような事前準備と確認を一つ一つクリアしていった。施設の協力があってこその成功」と米山氏は笑う。
この環境下での運営が、本来の研修の内容をより充実したものにする。
米山氏が地方の旅館にアップデートを期待する点として真っ先に挙げるのが通信インフラだ。MICEの主催者が近年、特に重要視しているという。「ある地域で行われた会議案件で、通信環境が弱いことがあった」といい、「動画をつなぐと全く動かない状態になる」ことも珍しくなかった。多くの人数が一斉に通信を使うと、なおさらその問題が生じる。Wi―Fiをはじめとした通信インフラの増強が、より多くの法人需要を取り込む鍵になると指摘する。
開催地のアクセスについては、「新幹線の駅からバスで1時間半程度の圏内であれば、企業の選択肢に入りやすい」と語る。新幹線ネットワークの拡充により、かつてに比べて選べるエリアは広がってきている。
さらに地方の旅館ならではの強みがあると米山氏。「ソフト面で各旅館さんが非常にいい対応をしてくださる」。地方の宿では食事の量をしっかり出してもらえるという実感があるという。地元の食材を豊富に使った食事が、都市部と比較して費用対効果に優れて提供されている。
コロナ禍を経て、企業は改めてリアルな場の価値を認識し始めた。地方の旅館は合宿型研修や会議など、そのリアルな場の受け皿として存在感を増しつつある。ハード面の整備が進めば、地方旅館が担うMICEの役割はさらに大きくなるだろう。

米山氏




