壽山堂「元祖秋田諸越」
饅頭(まんじゅう)、団子、羊羹(ようかん)などと並んで古くからの和菓子に、干菓子「落雁(らくがん)」がある。
蒸したもち米を干し、石臼で挽(ひ)いた粉を炒(い)ったものに砂糖や水飴を加え、絵柄や模様などを彫りつけた木型で型打ちして乾燥させた菓子である。
型打ちすることから「打物(うちもの)」とも呼ばれ、それを代表するのが「落雁」で江戸時代、贈答用に大いに好まれた。
日本三大銘菓に挙げられる金沢の「長生殿(ちょうせいでん)」、長岡の「越乃雪」、松江の「山川」はいずれも「落雁」。慶弔や茶席によく使われる。
和洋、いろいろな菓子があふれる昨今、存在感は少々薄いが、老舗の和菓子店では季節を取り込んだ干菓子を必ず作る。
数ある落雁の中で特異なのは米粉でなく小豆の粉を使った「秋田(あきた)諸越(もろこし)」。元祖の杉山壽(じゅ)山(さん)堂(どう)は1705年創業の老舗で、初代が秋田産小豆を使って苦心の末に作って4代目藩主・佐竹公に献上したところ、「諸(・)々の菓子を越(・)え、風味よし」と称賛されたという。
それが諸越の名の由来で、小豆粉に砂糖、和三盆糖などを加えて練り固め、型打ちして乾燥させ裏焼きする昔ながらの製法を守り通している。
口に含むと表面はカリッ、中はほろり。上品できめ細かな甘さがしみじみと舌に広がる。音が同じだが、蜀(もろ)黍(こし)粉は使っていない。
秋田県内には同じ、「諸越」「もろこし」「唐(もろ)土(こし)」などの名称の他に、菓子舗榮太楼では「美幸(みゆき)乃華」、かほる堂では「炉ばた」など独自の菓名で販売している。
県内には「諸越」を製造販売する菓子店が今も30~40軒を数える。それぞれにひいき客が付いていてみごとに共存共栄。食べ比べるのもおもしろい。
そもそも「落雁」とは、広辞苑によると「空から舞い降りる雁」のことで、歳時記では秋の季語である。これが菓子の種類の名になったのには幾つか説がある。
一つは白地に散らした黒ゴマの風情が近江八景の「堅田(かただ)の落雁」を思わせることから。もう一説は、後陽成天皇が献上された菓子を見て、「白山の雪より高き菓子の名は四万の千里に落つる雁かな」と呼んだ和歌からという。いずれも風雅な菓名由来である。今年も秋のお彼岸が近い。
(紀行作家)
【メモ】「元祖秋田諸越」=杉山壽山堂(電話018.283.5185)1箱12個入り税込み918円、取り寄せ可

壽山堂「元祖秋田諸越」

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