重要文化財をラグジュアリーホテルへ 「保存と再生のせめぎあい」を体感する宿泊者限定ツアー、星のや奈良監獄が9月16日に開始


 星野リゾートは9月16日、国の重要文化財「旧奈良監獄」を再生したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」で、宿泊者限定の館内ガイドツアー「刻(とき)のプロムナード」の提供を開始する。毎日午前8時から実施し、所要時間は45分程度。料金は無料で、定員は10名。通年開催となる。

 明治時代の建築技術が息づく赤レンガの空間を、スタッフの案内でめぐる本ツアー。単なる施設見学にとどまらず、「いかに再生されたか」という問いに正面から向き合い、歴史的建造物をラグジュアリーホテルへと昇華させた挑戦のストーリーを伝える内容だ。

「ありのまま遺す」だけでなく、再生の葛藤を体感

 旧奈良監獄は1908年(明治41年)に誕生した、いわゆる「明治五大監獄」の一つだ。赤レンガ造りの建築と、放射状に房舎が延びる「ハヴィランド・システム」を採用した設計は、当時の全貌を今に伝える貴重な遺構として高く評価されている。1946年には「奈良少年刑務所」に改称され、更生教育の場として2017年の閉庁まで役割を果たした。閉庁直前の同年2月には重要文化財に指定されている。

 日本における文化財保護は「ありのまま保存する」ことを原則としてきたが、維持・活用の課題解決に向け、2011年のPFI法改正により民間ノウハウの導入が可能となった。PFI法とは、民間の資金やノウハウを活用して公共施設の建設や維持管理・運営を行う公共事業の手法だ。

 旧奈良監獄の再生においては、「遺すべき歴史」と「新たな価値を見出す空間」との調和をめぐり、幾度となく議論が重ねられた。星野リゾートは本ツアーについて、「保存と活用の狭間で繰り広げられた葛藤や、文化財の新たな可能性を切り拓いた知られざるストーリーを伝える」と説明する。

 「刻のプロムナード」というツアー名の「プロムナード」は、フランス語で「散歩」「散歩道」などを意味する言葉だ。

中央看守所、メインラウンジ、ダイニングラウンジ 三つの空間が見どころ

 ツアーの見どころは大きく三つに分かれる。

 一つ目は、「歴史の継承と機能美」をテーマにした「中央看守所」だ。ホールのような開放感を持つこの空間は、近代監獄の象徴である「ハヴィランド・システム」の全貌を見渡せる唯一無二の場所とされる。全てを見渡す看守台も現在に残されており、歴史的価値の保存を最優先としつつ、化粧のような塗装と巧みなライティングによって洗練された機能美を際立たせた空間の成り立ちを、スタッフが解説する。

 館内には、歴史を丁寧に受け継いだ空間と、大胆に手を加えた空間が共存しており、「保存と再生」の鮮烈なコントラストを体感できる。歴史を色濃く残すエリアでは、当時の高度な建築技術に加え、不平等条約の撤廃を目指してあえて贅沢に造られた背景や、設計者の強いこだわりを垣間見ることができる。

 二つ目の見どころは、「デザイナーの想いに触れる」をテーマにした「メインラウンジ」だ。旧講堂を再生したこの空間では、天井を取り払うことで創出された高さ9mの大空間に、美しいトラス構造の梁を仰ぎ見ることができる。

 ツアーでは、「明治の西洋建築」を掲げた空間デザインの意図をスタッフが解説。既存のアーチ窓と調和する新設のパーティションが織りなす荘厳な空気感や、和洋が交差するインテリアの選定など、ラグジュアリーホテルへと昇華させたデザイナーの情熱に触れる内容となっている。西洋のインテリアをふんだんに配置した空間が広がる。

 三つ目は、「屋外と調和する豊かな寛ぎ」をテーマにした「ダイニングラウンジ」だ。有識者との幾度もの対話を経て生まれたこの空間は、かつての倉庫を再生したもの。壁を切り抜いて設けた大窓や、元は3つに分かれていた空間の再編など、「保存」から「再生」へと踏み切った劇的な変遷が体感できる。

 注目すべきは、開口部に組み込まれた耐震補強の鉄骨だ。歴史あるレンガと現代構造が織りなす「時代の対比」を象徴する見どころの一つとして位置づけられている。単に「ありのまま遺す」だけでなく、屋外との繋がりや開放感あふれる寛ぎを生み出した再生へのストーリーを、スタッフがエピソードとともに語る。

独居房を繋げた客室にも「再生の物語」

 ツアーで案内する空間だけでなく、客室にも歴史の保存と快適性の追求を重ねた「再生の物語」が息づいている。独居房などを繋げた客室では、漆喰を剥がしてレンガのテクスチャーを活かした仕上げが施されており、往時の面影を残しつつラグジュアリーなプライベート空間へと昇華されている。ツアーの余韻とともに特別な滞在が続く設計だ。

「刻のプロムナード」概要

 ツアーの実施概要は以下のとおりだ。

「明けの重要文化財」 日本随一のヘリテージホテル

 「星のや奈良監獄」のコンセプトは「明けの重要文化財」。旧奈良監獄が誕生した、近代国家として歩み始めた黎明の時代に豊かに花開いた西洋文化を滞在の随所に織り込み、歴史の深みと圧倒的な非日常に浸る旅の喜びを創出する、日本随一のヘリテージホテルとして位置づけられている。

 所在地は奈良県奈良市般若寺町18。客室数は48室で、チェックインは15時、チェックアウトは12時。料金は1泊147,000円〜(1室あたり、税・サービス料込、食事別)。アクセスはJR奈良駅より車で10分、近鉄奈良駅より車で6分。日帰り利用が可能な「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」も併設している。電話は050-3134-8091(星のや総合予約)。

 星のやは「その瞬間の特等席へ。」をコンセプトに、各施設が独創的なテーマで圧倒的非日常を提供するブランドだ。国内外に展開する各施設では、その地の風土、歴史、文化をおもてなしに繊細に織り込み、出会った季節にしか味わえない最高の瞬間を体験できる空間を提供している。2025年にブランド誕生から20周年を迎え、2026年6月25日に「星のや奈良監獄」が開業。2027年には「星のや飛鳥」の開業も予定されている。

 
 

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