8月半ばに千葉県を襲った記録的な豪雨。大雨が小康状態になった頃を見はかり、知り合いが無事帰宅できたのかとメッセージアプリ、ラインを送った。すると、こんな返信があった。JRが不通となり、千葉市内の蘇我駅に10時間も足止めとなったが、何とか帰り着くことができたとの内容だった。
そのメッセージの中に思いもよらぬ一文があり、目からうろこだった。それを紹介する。
「蘇我駅には何百人もが立ち往生していた。困ったことはたくさんあったが、女子トイレの問題は深刻だった。私は順番待ちの長蛇の列に3回並び、1回2時間並ぶ時もあって泣きたくなった。ただ、運休した電車が駅に2本停まっていて、そのトイレを使えると放送があったのは助かった」
筆者もJRや私鉄の駅や映画館などで女性用トイレに長い列ができているのを目にすることがあるが、「女性は大変だな」と思う程度だった。それが今回のような自然災害による足止めによって移動できない、それに加え女性たちは本当につらい思いをしたのだと分かった。
観光業界は東日本大震災と福島原発の爆発、そして風評被害、その後は新型コロナ感染症、ここ3、4年は過去に例を見ない猛暑と全国各地でのクマの被害で大きな打撃を受けている。熊本地震による列車や道路の不通、今回のような大雨や台風などで観光施設や駅、空港に足止めを強いられた場合の対策を改めて考えなくてはいけない時期に来ているだろう。
思いつくままに対策を挙げてみた。飲み水、食料の確保、復旧情報の提供などに加え、冬は防寒対策も必要だ。道の駅にしてもしかりだ。道の駅は防災拠点でもあるのだが、女性トイレ問題はどうなっているのだろう。
海外旅行でも女性はトイレに頭を悩ますという。トイレの場所が分かりにくかったり、欧米ではチップを払わなくてはいけなかったりする。また、貸し切りバスの移動では、日本に比べてトイレ休憩の回数が少ない。そのため食事の際、飲み物を控えるなど自衛策を講じている女性もいると聞く。このようなケースでは、旅行会社と旅行者本人が事前に対策が立てられるが、今回のような自然災害による立ち往生ではいかんともしがたい。
国交省の2025年の調査によると、男性用便器の設置数(個室と小便器の合計)に比べ、女性用は駅で37%、空港で34%、バスターミナルで71%、映画館で11%それぞれ少ないことが分かった。女性が困るのも当然だ。
政府の「骨太の方針2025」では、女性用トイレにおける行列問題の改善に向けた取り組みの推進を掲げている。例えば、花火大会などのイベントでの仮設トイレについて、設置個数や男女比率を検討する際に、過去のイベントでの行列の状況や男女間の行列の著しい差が発生しないよう、イベント主催者に緊急の呼びかけを行った。
さらに女性用トイレの面積を増やしたり、個室を増設したりした事例を紹介。男女のトイレの混雑状況に応じて両トイレを隔てる可動式の間仕切りを移動させることにより、男女の個室数を調整する改善策も盛り込んでいる。
快適に旅をしてもらうためには、いろいろな要素がある。今回の千葉豪雨によって、観光業界にも問題提起となっただろう。
(日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)




