岡崎会長(中央右)と観光経済新聞社長の積田(中央左)
やまがた女将会(岡崎純子会長 蔵王温泉 深山荘高見屋)は9月7日、観光経済新聞本社を訪れ、米雑誌「ナショナルジオグラフィック」で2026年に行くべき世界の旅行先25選に日本国内で唯一、「山形県」が選ばれたこと、JR東日本・山形県「山形庄内夏の観光キャンペーン」が9月末まで開催中であること、俳優の船越英一郎氏が山形県福知事に就任したことなど、山形県の観光情報をPRした。
同会は県内で旅館・ホテルを営む41名の女将で構成し、国内外から訪れる観光客へのサービス向上に努めるとともに、首都圏等への観光キャラバンを通して、山形県の魅力発信や会員の研鑽、相互の親睦を図ることを目的に活動している。今回の表敬訪問には岡崎会長をはじめ、副会長の工藤真理女将(上山温泉 花明りの宿月の池)、副会長の山口陽子女将(天童温泉 ほほえみの宿滝の湯)、顧問の川崎禮子女将(蔵王温泉 ル・ベール蔵王)、理事の五十嵐律子女将(東根温泉 旅館さくら湯)、岡崎美樹子女将(蔵王温泉 JURIN)が参加。公益社団法人山形県観光物産協会からも、佐藤真二理事、鈴木利弘観光事業部長ら事務局が同行した。

「東京から300kmの別世界」 世界的評価の背景
世界をリードするメディアブランド「ナショナルジオグラフィック」が発表した「Best of the World 2026(2026年に行くべき世界の旅行先25選)」に、日本国内で唯一、山形県が選出された。
山形県が評価されたポイントとして、「東京から300kmほどの距離にも関わらず、別世界のような静けさを保つ場所であり、日本の旅行者もまだ多くが訪れていない聖なる山々、静寂に包まれる寺社、フォトジェニックな温泉、四季を通じて各地で開催される伝統的な祭りなど、混雑を避けて、通年で、古くからの伝統と神秘的なアウトドア体験ができる」点が挙げられた。
「ナショナルジオグラフィック」は1888年に創刊された月刊誌を中核とし、世界170カ国以上で発行、850万人が定期購読する国際的メディア。「Best of the World」は同誌が毎年発表しているリストで、世界各地の旅行専門家チームと国際編集チームによって選出・執筆されている。
山形県観光物産協会の佐藤理事は、選出に至る経緯について「実は3年くらい前につながりがあって、その流れがあって今回」と述べた。また、山形県の場合は「特定の観光地じゃなくて、山形県で選ばれているというのはなかなかないこと」とも説明した。
岡崎会長はこの選出を受けて「せっかく選んでいただいたのだから、最大限活用していく。これをきっかけに、持続可能な観光地にしていくのが最も大切なこと」と強調した。あわせて、「宿屋は宿泊するだけの空間ではない。山形県の食も提供する。山形の文化を伝える空間だ」とし、県の物産協会と連携を深め、山形の魅力をさらに発信していく方針を示した。

岡崎女将(会長)
「山形庄内夏の観光キャンペーン」9月末まで開催中
JR東日本および山形県が共同で実施する「山形庄内夏の観光キャンペーン」は、2026年7月1日から9月30日までの期間、庄内エリアを舞台に展開されている。
交通アクセス面では、東京から羽田空港経由の飛行機で「おいしい山形空港」まで約1時間。山形新幹線「つばさ」で新庄駅まで約3時間30分、陸羽西線に乗り換えて酒田駅・鶴岡駅まで約70分で結ばれる。新潟からはJR羽越本線特急「いなほ」で酒田駅まで約1時間50分でアクセス可能だ。
キャンペーン期間中の施策として、エキタグスタンプラリー「しあわせ鳥見んぐ」(9月30日まで)や「山形庄内めぐりっぷ」(9月30日まで)を実施中。仙台と羽黒山頂を結ぶ臨時列車「仙台⇔羽黒山頂号」も土日祝日に運行している。さらに、駅からタクシーで観光スポットを巡る定額制の周遊ルートも用意。1台あたり1〜4名まで同じ料金で乗車でき、予約不要で当日利用が可能だ。
列車「海里(KAIRI)」は「新潟の食」「庄内の食」と「日本海の景観」をコンセプトに運行。4号車は食事付き旅行商品専用の「ダイニング車両」として、美しい日本海の景観を眺めながら上質な旅を提供している。
庄内エリアには国宝・羽黒山五重塔、クラゲ展示数世界最大級の東北エプソン アクアリウムかもすい(加茂水族館)、最上川河口の広大な敷地を活かした酒田の花火大会など多彩な観光資源が揃う。グルメでは、庄内砂丘メロン、だだちゃ豆、岩ガキ、日本ご当地ラーメン総選挙初代王者の酒田ラーメンなどが名物として知られる。
また、羽黒山参籠所斎館では羽黒山午年御縁年を記念した期間限定の特別膳「羽黒山八景膳(精進料理)」を提供中。北前船が運んだ京の文化にふれる「酒田舞娘」も体験できる。
温泉については、鶴岡市のあつみ温泉、湯野浜温泉、湯田川温泉、由良温泉をはじめ、遊佐町の鳥海温泉、三川町のなの花温泉、戸沢村の草薙温泉、酒田市の湯の台温泉、庄内町の月の沢温泉など、庄内エリア全域に個性ある温泉が点在する。
山形県観光物産協会の鈴木観光事業部長は観光に関する調査結果を引用し、「一番順位が高かったのがやっぱり宿だった」と述べた。「東北では順位が一番高かった。温泉文化の売り方もしっかりそこに据えてやっていかなきゃいけない」との認識を示した。
船越英一郎氏が山形県福知事に就任
令和8年4月23日、俳優の船越英一郎氏が山形県の福知事に就任した。辞令交付は同日午後4時に山形県庁5階貴賓室で行われ、知事の吉村美栄子氏が出席した。
船越氏は1960年生まれ、神奈川県湯河原町出身。1982年にTBS系ドラマ「父の恋人」で俳優デビュー。「小京都ミステリー」「箱根湯河原温泉交番シリーズ」「外科医鳩村周五郎」など多数の2時間サスペンスドラマに出演し、「2時間ドラマの帝王」の肩書を持つ。連続ドラマの主演や情報番組の司会、バラエティ番組、舞台など幅広く活躍。近年も「名探偵明智小五郎シリーズ」「弁護士六角心平京都殺人事件簿」などに主演している。
平成27年5月には「やまがた特命観光・つや姫大使」に就任し、長年にわたり山形県産米「つや姫」および山形県の知名度向上にPR活動を続けてきた実績を持つ。今回の福知事就任は、そうした長年の貢献と山形県との深い縁を踏まえたものだ。
山形県観光物産協会の佐藤理事は「ハワイにつや姫を売り込んだ時に一番最初に実は手伝ってくれて、なぜかそのつや姫を現地で広めてくれた。その時から知事ともずっと長く付き合っている」と、船越氏と山形との関係の深さを説明した。現在はYouTube動画も活用して山形県のPRを行っているという。
グリーンシーズンの誘客と持続可能な観光地づくりが課題
会合では、インバウンド需要の拡大についての意見も交わされた。岡崎会長は「冬はやっぱりアジア圏が多い。台湾、そういう方々が多い中で、欧米も来られてるし、欧州の方からも来られてるっていうのは、もう明らかにグリーンシーズンとしても今年の夏もそうですけれども、結構お越しいただいている」と現状を説明した。
その上で「グリーンシーズンをいかにやはり海外のお客様からお越しいただくかっていうのも一つの課題」と強調。ナショナルジオグラフィック選出を「一過性で終わらせず、持続可能な観光地へつなげる必要がある」との認識が参加者間で共有された。
天童温泉・ほほえみの宿滝の湯の山口陽子女将(副会長)は、欧米からの個人旅行客の増加に対応するため、天童温泉を拠点に羽黒山までのバス運行を開始したことを紹介した。「欧米の方が少し増えてきているな、という感じ」とし、スマートフォンで情報収集しながらDMCを通じて自由に動く旅行スタイルに対応する取り組みが進んでいる。

山口女将
上山温泉・花明りの宿月の池の工藤真理女将(副会長)は、上山温泉でのワインの里づくりの取り組みを紹介。ワイナリーが当初の3〜4社から現在は8社まで増加し、年1回開催する「ワインワールド」には約9000人が訪れる全国最大規模のイベントに成長したと報告した。

工藤女将
蔵王温泉・ル・ベール蔵王の川崎禮子女将(顧問は、蔵王温泉でウインタースポーツに加え、音楽や食とのコラボレーション企画、「おもてなし山形トライアスロン」やサマージャンプ大会など通年型の観光誘致に力を入れていることを紹介した。同トライアスロンは「日本一厳しいコース」として知られているという。

川﨑女将
また、蔵王の樹氷を守るための保護プロジェクトへの参加についても言及があった。岡崎会長は「大切な資源を守ろうということで、先々の未来に向けて取り組んでいる」と述べた。旅館経営者と観光協会が一体となって観光資源を守る活動は、やまがた女将会が設立25年にわたって継続してきた取り組みの一環だ。
山形空港の存続と広域連携も重要課題に
今後のインバウンド増加を見据え、山形空港の維持・存続についても意見が集まった。岡崎会長は「残しておかなければならない、絶対に必要な施設」と述べ、空港の存続に向けた継続的な働きかけの必要性を強調した。
東根温泉・旅館さくら湯の五十嵐律子女将(理事)は、東根温泉が山形空港に近く交通の利便性が高い立地を活かし、蔵王、山寺、銀山温泉など周辺観光の拠点として機能していると説明。観光客が各地を周遊する際の起点として需要が高まっていることを紹介した。

五十嵐女将
山形県の食の資源についても議論が及んだ。つや姫、雪若丸といったブランド米、さくらんぼ(紅てまり)、米沢牛・山形牛、果物全般など多彩な食材が揃う山形では、宿泊施設が地域の食文化を伝える場としての役割を担っている。蔵王温泉・ル・ベール蔵王の川崎女将は、「お客様に出す時は夜はつや姫、朝は雪若丸を出している」と紹介。さらに蔵王の標高(約900m)では100度前に沸騰するため炊飯に工夫が必要であることを話し、精米機の導入など品質へのこだわりを紹介した。

岡崎美樹子女将
山形県観光物産協会は現在、インバウンドにおけるモデル観光地づくり事業を県と連携して推進しており、14のモデル観光地のうちの1つとして高付加価値な取り組みを進めている。また、山形市は2020年にジャパンタイムズで選出された実績を持つ。「やってきたことが今そういう形として出てきている。突然ではない」(佐藤理事)として、継続的な取り組みの積み重ねが現在の評価につながっているとの認識が共有された。
「山形庄内夏の観光キャンペーン」は9月30日まで開催中。山形県の観光情報は、山形県観光情報総合サイト「やまがたへの旅」(https://www.yamagatakanko.com/)で確認できる。

左から川﨑女将、工藤女将、観光経済新聞社長の積田、岡崎女将、山口女将、岡崎女将、五十嵐女将




