北原氏
独自性を磨き、人財のDX・AXで切り拓く宿泊業の真価
2025年の訪日外客数は過去最高を記録し、観光業界はかつてない活況に沸いています。しかし、私たちはこの数字に安住してはなりません。足元では特定国からの訪日自粛といったカントリーリスクが浮き彫りになり、特定市場への依存からの脱却と、安定的な集客構造の構築が急務となっています。未曽有(みぞう)のパンデミックを経て露呈した人手不足や低賃金という構造的課題を、改めて見直すべき時がきています。
制御不能な外部環境に翻弄(ほんろう)されたからこそ、私たちは反転攻勢を見据え、自社の「高収益化体質」への変革を断固として実行する好機を得たと言えます。この変革の成否は、未来の利益を生み出す源泉である「人財」への戦略的な再投資にかかっています。
私たち宿泊事業者は、人件費を「コスト」ではなく、「未来の価値を創り出す投資」と再定義しなければなりません。離職率の高さや若手リーダーが育たない実情は、教育制度の不在や、働く人が職業的価値に誇りを持てない環境に起因します。生産性向上と賃金水準の適正化を両輪で進め、人財育成プログラムと世代を超えた交流環境を整備し、真のホスピタリティを発揮できる組織を築き上げることが、今すべての経営者に求められています。
この人財投資を支える強力な武器が、DXやAX(AIトランスフォーメーション)への取り組みです。最新技術による業務効率化や価値の再構築は、単なる省力化にとどまらず、スタッフがより付加価値の高い人的サービスに専念できる環境を生み出します。
特に業界の大半を占め、かつ業界を支える存在である中小ホテルは、自らの「独自性」を磨き抜く必要があります。私たち一般社団法人全日本ホテル連盟としても、「観光立国の実現と地域の活性化に寄与する」というミッションのもと、タウンミーティングをこれまで松本市を皮切りに福井市、金沢市、北上市、幸手市、福山市で開催してきました。こうした「共創」の場を通じ、自社単体では完結しない地域一体となった体験価値を創造していくことが不可欠です。
また、国や行政には、最前線のスタッフの処遇を厚くし、かつ育成を強化するための政策的な支援を要望します。中小事業者のDX・AX推進や人財育成への継続的な投資こそが、観光立国実現の揺るぎない土台となります。
私たちの業界の価値は、私たち自身の手で向上させるべきです。これからも、人財育成を軸とした共創の輪を広げてまいります。

北原氏




