企画性やオリジナリティが高い、優れた鉄道旅行を表彰する2019年度の「鉄旅オブザイヤー」が5日発表され、北越急行(新潟県十日町市)の「超低速スノータートル『ナイトタートル~夜のトンネル探検~』」がグランプリに輝いた。授賞式は同日、さいたま市の鉄道博物館で行われた。
同イベントは今回で9回目。旅行会社部門の表彰対象は、18年11月から19年10月までに催行された国内を目的地とする募集型・受注型の企画旅行で、16社から85件の応募があった。
主催者の実行委員会(委員長、堀坂明弘・日本旅行社長)と外部審査員(同、芦原伸・日本旅行作家協会専務理事)の審査で、グランプリ、準グランプリ、DC賞、審査員特別賞、ルーキー賞を決めた。
冒頭あいさつした堀坂委員長は「鉄道は絵になる。乗ることを目的とする車両もたくさん出てきている。インバウンド(の増加)も大事だが、国内旅行の活性化もまた重要だ」と述べ、鉄旅が果たす役割に期待した。
グランプリのツアーは六日前駅(ほくほく線起点)を午後11時40分に出発する列車に乗り、午前4時40分に戻ってくるオールナイトの行程。途中の美佐島駅からは赤倉トンネル内(約2・2キロ)を歩いてしんざ駅に向かう。次停車駅、ほくほく大島駅までは時速5~10キロの超低速で走る電車体験をしてもらう。特性ヘルメットや南魚沼産コシヒカリのおにぎり夜食が付いて、参加料は大人9千円とした。
18年10月と19年10月に実施。募集人員40人に対し5倍ほどの申し込みがあった。県外客が8割を占め、九州や鳥取、大阪、和歌山からも参加があったという。アンケートに答えてもらったところ、100点満点で平均92点だったと関係者は顔をほころばせる。
審査員の井門隆夫さん(井門観光研究所)は、「線路点検ではあるまいに、夜通し1駅分トンネルの中を歩き、移動は超低速のスノータートルという奇想天外なツアーに驚いた。3セク鉄道の活性化策として、5倍もの抽選となるような鉄旅が定着することを祈っている」とコメントした。
準グランプリはクラブツーリズムの「日本で唯一の行商専用列車 近鉄『鮮魚列車』」が受賞。鮮魚列車は日本唯一の行商人専用列車として近畿日本鉄道が走らせている。宇治山田駅(三重県伊勢市)から上本町駅(大阪市)まで、伊勢志摩魚行商組合連合会の会員しか乗車できない。
クラツーの商品はその車両に一般人を貸し切りで乗せるもので、昨年3月、6月、9月に実施。370人が参加し、販売高は約380万円だった。車内に魚のにおいがないため、「昼食にちらしずしを用意し、開封した時の酢のにおいで鮮魚の気分を味わってもらった」という。
元祖鉄道アイドルの豊岡真澄さんは「乗れるだけで他には何もいらない。それくらいテツにはインパクトのある企画。車内が魚くさくないのも面白い」と絶賛する。
このほか、審査員特別賞には読売旅行と日本観光鉄道の「願いが叶う福袋列車 只見線&陸羽西線 東北2大ローカル線『災害復旧祈念応援福袋列車』」、ルーキー賞は朝日旅行の「ナンバー8265 貸切車両で行く『三陸鉄道全線乗車』と貨物専用鉄道『岩手開発鉄道』に迫る旅」、DC賞は日本旅行の「『サロンカーなにわ』で復活『サロンカー明星』で行く熊本」が選ばれた。
グランプリを受賞した北越急行社員はヘルメット姿で商品説明