日本政府観光局(JNTO)が12月21日に発表した2012年11月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比17.6%増の64万9千人だった。東日本大震災前の水準の前々年同月との比較では2.2%の増加で、12年6月以来のプラスとなった。韓国の回復が進み、台湾などが過去最高を記録したが、尖閣諸島をめぐる問題を受けて中国は前々年比約2割の減少だった。
11月の単月としては、07年11月の68万7千人に次ぐ過去2番目の実績。12年1〜11月の累計は767万9千人となり、前年同期比で36.0%増、前々年同期比で3.6%減だった。12年の年間外客数は、12月の集計が残っているが、年間目標の900万人には届かず、800万人台前半となる見通し。
11月を市場別にみると、韓国は前々年同期比6.9%減の18万4千人。放射能に関する風評被害は一部に残っているが、震災前と比べた減少率は初めて1桁台に縮小した。LCC(格安航空会社)の就航による訪日旅行の割安感、円高ウォン安の緩和傾向がプラスにはたらいた。
台湾は同37.9%増の12万3千人と大幅な伸びを示し、過去最高を記録した。LCCの就航で紅葉シーズンの旅行需要や若年層の旅行需要が喚起され、団体旅行に加え、個人旅行者も増加した。
このほか過去最高を記録したのが香港、タイ、マレーシア、インド、ベトナム。特にタイは8カ月連続で過去最高を記録し、1〜11月の累計23万5千人はこれまでの年間記録を更新している。
しかし、中国は同24.0%減の5万2千人。10年11月は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の影響が大きかった時期であるため、減少率は小さく表れている。個人旅行は減少しているものの、比較的影響は小さいが、団体旅行は前月に引き続き新規予約が鈍化している。
他の主要市場では、米国が同1.5%減の5万8千人と震災前とほぼ同じ水準。豪州は円高などが影響して同7.7%減の1万4千人。欧州ではドイツが放射能の風評被害などの影響で同11.7%減の1万1千人。
訪日市場の動向について観光庁の井手憲文長官は、12月21日の定例会見で「全体としては2010年のレベルまで戻ってきた。13年は韓国との地方間の観光交流、ASEAN(東南アジア諸国連合)へのプロモーションなどに力を入れ、さらに伸ばしたい」。尖閣諸島の問題の影響が残る中国については「しばらく減少が続くが、中期的には回復への“胎動”が始まっている」と指摘した。
一方、12年11月の出国日本人数は、前年同月比3.9%減の144万人。1〜11月累計は前年同期比9.8%増の1706万2千人で、年間では1800万人を超える見通しだ。