栗田国交事務次官 共同インタビュー 「GoToに下支え効果」


抱負を語る栗田事務次官

観光産業の収益力向上必用

 7月の人事で就任した栗田卓也国土交通事務次官が9日、観光経済新聞社が加盟する国土交通省交通運輸記者会の共同インタビューに応じた。観光施策では、GoToトラベル事業について、観光事業者への支援に一定の成果を上げているとの認識を示した。国内旅行の需要をさらに喚起するとともに、新型コロナウイルス感染症の収束を見据え、インバウンドの環境整備も進める考えを示した。

 観光に関する主な回答内容は次の通り。

◇   ◇

 観光産業は、新型コロナの感染拡大に伴う訪日外国人旅行者の大幅な減少、あるいは日本人の国内旅行控えで大きな打撃を受けている。観光関連事業者の事業継続と雇用維持が大事なので、業界の要望を踏まえ、所管は他省庁だが、雇用調整助成金の要件緩和、持続化給付金制度の創設などの支援策を講じてきた。

 一方、ウィズ・コロナの時代では、感染拡大防止と経済活動、観光振興の両立が必要だ。そのために宿泊施設などの安全、安心な環境づくりを支えていく必要がある。感染拡大予防ガイドラインや新しい旅のエチケットの普及などで、安全、安心に旅行できる環境を整備し、Go Toトラベル事業で国内旅行需要を喚起していきたい。

 GoToトラベル事業は、新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言も踏まえて7月22日に開始したが、参加事業者へのヒアリングによると、7月27日~9月3日で少なくとも781万人泊の利用実績があった。旅行会社へのヒアリングでは、4~6月の国内旅行は大手旅行会社が前年同期比9割以上の減少、中小旅行会社が約8割以上の減少で推移したという。GoToトラベル事業なしで、その状況が続いたとしたら、地域の事業者は、より危機的な状況に追い込まれていたとみられる。そういう意味では厳しい状況の中で、GoToトラベル事業には一定の下支え効果があったと認識している。多くの知事からも、効果は相当あったとの声も頂戴している。

 ただ、3密を避けるために宿泊施設1軒当たりの宿泊客、団体旅行1本当たりの旅行客が減少し、事業者の売り上げや利益が減少している可能性がある。したがって観光産業の収益力を向上させていく取り組みを支援していく必要がある。

 また、インバウンド需要の回復には一定の時間がかかる。日本人海外旅行の需要を取り込む観点からも、3密を避けてゆとりのある滞在メニューの充実、ワーケーションなど働き方改革に合致した新たな旅行スタイルの普及などを通じて、日本人の国内旅行市場のさらなる拡大を図っていくことも有効だ。

 もちろんインバウンドに関しては、回復までの期間を活用しながら、訪日プロモーション、魅力ある滞在コンテンツの造成、Wi―Fi、多言語対応などの受け入れ環境の整備、バリアフリー化などをしっかり進め、新型コロナの世界的な収束が見通せた段階で、安全、安心な目的地として日本が世界中の旅行者に選んでもらえるよう取り組んでいきたい。

 今年度は現行の観光立国推進基本計画の最終年度だ。2030年の訪日外国人6千万人といった目標の達成に向けて、欧米豪からの誘客、長期滞在の促進、観光消費の拡大などの視点を含めながら、ウィズ・コロナのインバウンド政策について幅広い観光政策を議論し、観光立国の実現に取り組んでいきたい。

 栗田 卓也氏(くりた・たくや)京大法卒。1984年建設省(現・国土交通省)入省。都市局長、総合政策局長、国土交通審議官を経て、2020年7月21日付で現職。59歳。大阪府出身。

抱負を語る栗田事務次官

 
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