【2021新春対談】OYO JAPAN × ホテルテトラグループ


国内外で拡大するOYOのビジネスモデル

 世界80カ国で展開するグローバルなホテルブランド「OYO(オヨ)」。日本には2019年に進出し、国内での加盟施設は現在200軒以上と、わずかな期間で急成長を遂げている。OYOの日本法人、OYO JAPANの田野﨑亮太共同代表・副社長に同社の事業展開、2020年にグループ施設7軒をOYOブランドにしたホテルテトラの三浦孝司社長にOYOとの連携の理由、メリットを話してもらった。

 

 ――ホテルテトラグループについて教えてください。

 

ホテルテトラ 代表取締役社長 三浦孝司氏

 

 三浦 北海道の函館で事業をスタートし、今年で40年がたちました。先代が38室のビジネスホテルをつくったのが始まりで、先代が亡くなった後、私が事業を引き継ぎました。

 宿泊施設は全国に25軒あります。北海道は函館の6軒をはじめ、札幌、旭川、富良野、層雲峡、十勝川など、合計12軒。ほかに、静岡県の焼津、京都、北九州などにあります。形態は温泉旅館、リゾートタイプ、ビジネスタイプなどさまざまです。

 

 ――今回、25軒のうち、7軒がOYOブランドに加盟しました。それぞれの紹介を。

 三浦 北から順に、まず札幌の「OYOホテルテトラスピリット札幌」はビジネスホテルで、客室数は47。大通にもすすきのにも近い、便利な場所にあります。

 函館の「OYOホテルテトラ函館駅前」は駅前のビジネスホテルです。客室数は84。2階にうちで経営しているすし屋が入っています。

 函館にはもう一つ、五稜郭公園に近い「OYOアネックスホテルテトラ函館五稜郭」があります。

 東京・赤羽の「OYOホテルテトラ赤羽」は、2階と3階がカプセルホテル、4階以上がビジネスホテルになっています。

 焼津の「OYOホテルテトラリゾート静岡やいづ」は大浴場があり、客室から富士山が見えます。静岡空港や東名高速の焼津インターに近く、コロナ前は外国人のお客さまが多かったです。

 京都の「OYOホテルテトラ京都駅前」は2020年7月にオープンしたばかり。こちらも駅に近く、便利です。

 北九州の「OYOホテルテトラ北九州」は小倉駅に近い、客室数303室のビジネスホテルです。1階に居酒屋やカラオケ店などのテナントが入っています。

 

 ――ホテルテトラグループのOYOブランドへの加盟について、どう思いますか。

 

OYO JAPAN 共同代表副社長 田野崎 亮太氏

 

 田野﨑 非常に光栄です。さまざまなタイプがあるので、お客さまに幅広い体験、価値を提供することができます。われわれのテクノロジーが、複数の施設を展開する企業さまにどのようないい影響をもたらすか、試金石になると思います。三浦社長のもとで働く社員の皆さまが働きやすくなったとか、お客さまがたくさんお見えになるようになったとか、そのような価値を提供できるように、今OYOの従業員がまい進しているところです。

 

 ――OYOについて改めて説明を。

 田野﨑 日本での創業は2019年2月。ホテルにおけるフランチャイズというビジネスモデルです。

 施設のアセット(資産)自体はオーナーさまが保有し、現場でのオペレーションもオーナーさま側が行うのですが、われわれはオペレーションのガイドラインを提供したり、オペレーションの際に利用できるプロパティマネジメント(PMS=施設の管理)の仕組みの提供、集客支援を行い、売り上げの一部をOYO加盟費として頂いています。

 国内の施設数は約200。客室数は約6千になります。現在、ほぼ全国の45都道府県で施設を展開しています。

 特徴的なのは、OYOが展開するホテルや旅館の予約はオンライン経由が多いことです。OYO全体の平均の客室稼働率がコロナの状況でも約50%、またGoTo以降はそれ以上維持できているのですが、およそ10%がOYOのダイレクトチャネルであるウェブサイトとアプリからの予約。25~30%がOTA経由。残りの10~15%が、お客さまが直接施設に電話をして予約をするウォークインという構成になっています。

 

 ――25軒のうち、7軒をOYOブランドにしましたが、7軒を選んだ基準は何ですか。

 三浦 OYOさんの強みは、施設の稼働率を上げてくれるところだと思っています。稼働率が5割以下のところがOYO向きなのではと思い、選びました。

 稼働率が悪いのは、レベニューマネジメント(収益管理)がうまくいっていないことが原因だと思います。その点、OYOのAIがダイナミックプライシング、つまり適正な料金を自動的に設定してくれるということで、そこに魅力を感じました。

 この仕組みでインドでナンバー1、中国でナンバー2のホテルチェーンになったと聞いていましたので、すごく興味を持っていたところでした。

 

 ――OYOには6月から段階的に加盟したと聞いています。コロナ下の特殊な状況ですが、加盟のメリットをどう実感していますか。

 三浦 AIはもとより、OYOの強みは「人」だと実感しているところです。現在のシステムには課題もありますが、改善の提案はOYOさんに随時しています。田野﨑さんもそうですが、担当の皆さんがとにかくよく働いてくれます。

 OYOに加盟した施設の数字的には、11月の京都の稼働率が目に見えて上がりました。焼津と北九州も堅調に推移しています。

 田野﨑 ダイナミックプライシングやプロパティマネジメント(PMS)について、システム自体は非常に効果を発揮するものですが、ただ施設さまにご提供するというだけでは効果を発揮しません。使いこなしていただくためには、OYOからの人的支援も必要です。OYOの担当者が施設さまに対して、OYO独自のPMSの操作方法のご説明も含めてさまざまな稼働率や収益向上ための支援をしています。

 一度、OYOにご参加いただいたパートナーさまの離脱は非常に少ないです。皆さまがOYOのシステムについて、価値を感じていただいている証拠だと思います。

 2021年にはシステムのバージョンアップを計画しています。現在も1日に何度も客室料金の変更をAIが自動でしています。とはいうものの、日頃、三浦様をはじめ加盟施設さまからわれわれのシステムにフィードバックを頂いており、PMSやダイナミックプライシングに関するご要望を多く頂きました。そうした声に耳を傾けて2021年はシステムの改善を強化する方針です。例えば、数秒単位で部屋ごとの最適価格を変えていき、施設さまとお客さまに提示するようなシステムを新たにご提供できるようになると思います。

 

 ――コロナ禍で宿泊業は一時、厳しい状況に追い込まれました。

 三浦 団体や出張が減り、外国人のお客さまもなくなり、3月から5月の売り上げが前年の1~2割になりました。生き残りのために、農業や漁業、テイクアウト、Eコマースなど、さまざまな手を打ちました。55手ぐらい打ったのではないでしょうか。売り上げ自体は少ししか上がっていませんが、将来に向けて、ノウハウは蓄積できたと思います。

 

 ――OYO全体の状況は。

 田野﨑 3月ごろからインバウンドのキャンセルが出て、そこから急激に稼働率が下降しました。コロナ前は平均65%あったのが、30%まで落ち込みました。今は徐々に回復傾向にあって、直近の11月は約50%。 全国平均と比べると毎月全国平均の稼働率を大きく上回っており堅調です。理由の一つは、われわれのお客さまはもともとビジネスや平日利用が多いこと。二つ目はわれわれのダイナミックプライシングとウェブサイト、アプリを使った集客システムが功を奏していること。三つ目はGo Toトラベルキャンペーン。

 

 ――OYO独自で15%のディスカウントも実施しています。

 田野﨑 OYOが9月にGo Toトラベルに対応開始したタイミングに合わせて行いました。Go Toトラベルと合わせて50%の割引になります。そこでだいぶお客さまを取り込むことができました。お客さまにリピーターになっていただきたいと、マーケティング費用として拠出しました。

 

 ――OYOが提供する衛生管理プログラム「あんしんステイ」はどうですか。

 三浦 OYOから提供された受付用の飛沫対策グッズを使わせてもらっています。

 田野﨑 コロナの対応においても、OYOがグローバル展開していることの利点があります。衛生対策のマニュアルをユニリーバ社の研究チームとOYOと共同で海外で作成したものを、日本の事情にローカライズしてすぐに加盟施設に対してご案内しました。また、消毒液やハンドソープはユニリーバ社の製品を世界各国で大量購入することで安く仕入れて初回無償配布したり、割引料金で販売することが可能になりました。施設さまがコロナ禍を生き抜くために、さまざまなサービスを提供することが重要と考えています。

 

 ――OYOの強みにさまざまなOTAに関わる作業を任せられるところがあります。

 三浦 OYOも含めて、OTAの集客チャネル数が増えたということはあります。

 田野﨑 OYOのダイレクトチャネルはほかの海外系OTAに比べてコミッションが安いので、そこを増やすことで施設さまのコストを減らすことができます。

 その一環で、OYOの存在を世の中に広く知っていただくための広告宣伝を行っています。ユーチューブやツイッター、フェイスブックなどのオンライン広告にマーケティング費用を多く投じています。

 また、OYOがソフトバンクに出資を受けているグループ会社であることの利点もあります。同じくソフトバンクの関係企業、例えばペイペイのキャッシュバックキャンペーンに参加するなど、グループ企業ならではの強みを生かして認知度を高める取り組みを行っていますが、2021年はさらに増やしていく予定です。

 今年はテクノロジーへの投資、お客さまへの認知度向上の取り組みをさらに進め、加盟する施設さまへのさらなる価値提供ができるよう、努めてまいります。

 三浦 日本全国の宿泊業界が大変困難な状況にあると思います。お困りの方がいらっしゃいましたら、私でもOYOにでもご相談いただけたらお力になれるのではないかと思います。

 

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