【道標 経営のヒント 235】こんな日々は幸せなこと タグ広告プランナー 宮坂 登


 緊急事態宣言が延長され、今後の予測もつかない日々。こんなときにジタバタしても仕方がない。自分なりの日課を決めて生活している。オフィスに出るのはほぼ1日置き。始発電車で出勤して、昼過ぎには終えるようにしている。電話の数が限られる今、十分な時間がとれるし、企画書仕事もはかどる。ベンチャー企業からのオーダーは待ったなし。それに的確な時間で対応できていることに充実感も伴う。

 自宅ですることといえば、たまった書籍の読破だ。買ったままの本、途中まで読みかけてそのままになっていた本、膨大な数になっていた。一念発起して書棚を整理し、捨てる本、買い取ってもらう本、読む本に分類し、しかも読む本はカテゴリーごとに分類し、1週間でこれだけはと決めて読み進めている。買ったままの本はほとんどが新聞や週刊紙の書評欄で紹介されていたもので、もっと早く読んでいれば仕事にも役立ったのにと思うこともある。

 これまでも年間200冊読破を目標として、書物を手放すことはなかったが、今年はその数がもっと増えるのではないかと思っている。30年来のルーティンとして、日経や朝日、スポーツ紙、夕刊紙、週刊紙数紙にも目を通しているから、活字尽くしの人生を過ごしている感がある。

 コロナウイルスうんぬんは関係なく、こんな日々を得たことは幸せなことだと思うようにしている。広告を媒介として長い年月を突っ走ってきた日々を思うと、うそのような静かな時間の中にいる。アウトプットばかりでインプットをしようにもなかなかできなかったからである。

 印象深かったのは日本の職人たちを紹介した本だ。伝統技術が後継者不足で風前のともしびだということがさまざまな分野で問題になっている。どれもが一朝一夕で取得できる技術ではないだけに、その行く末が気になってしようがない。読んでいるだけで、工房に居座り、ただひたすら自分の作品と向き合う職人の姿が映像となって浮かび、彼らが培ってきた膨大な時間の重さを思う。ただ一つのことに集中し、評価を二の次とするその姿に言葉を失う。そしてそこには、艱難(かんなん)辛苦の中にいる旅館・ホテルの姿もダブってくる。何とかこの禍根の日々をくぐり抜けてほしいと思う。宿のおもてなしも日本の伝統技術だからである。

 一方、街を歩けばマスクもしない若者も多く、こいつら何を考えているのか、と怒鳴りつけたくなる。自分のことしか考えない、それが当たり前になっている世の中を「デリート」する。今こそそれができる機会なのではないかと思う。

 
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