【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 515】新型肺炎に打ち勝つ戦略5 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、新型肺炎に打ち勝ち、終息後にさらなる発展を遂げるためのステップを紹介しよう。新型肺炎の流行により観光業は大きな打撃を受けているが、こういう時だからこそ意気消沈することなく、経営改善に向けた取り組みを着実に実行していきたい。流行はいずれ終息する。良いスタートダッシュが切れるよう前向きに準備したい。

 8、終息後の方針検討

 新型肺炎が終息しても売り上げがすぐに元どおりになるわけではない。SARSやリーマン・ショック、9・11テロ後の宿泊業界の状況をみると、稼働率の上昇に7カ月~1年、稼働率の回復に1~5年、平均客室単価の回復に3~5年、RevPAR(販売可能な客室1室当たりの収益)の回復に4~5年かかっている。完全に回復するまでに数年かかると見ておいた方が良いだろう。

 営業自粛期間を耐えることだけを目標とするのではなく、数年後を見据えて途中で資金繰りに支障をきたさないように潤沢な資金の調達、経費削減、返済の先送りに努めたい。新型肺炎の発生前に既往債務の返済に苦労していた施設は、今回の新たな借り入れの返済が重なり一層厳しい状況となる。本格的に営業再開する時までに、運営方針を抜本的に見直して利益捻出に努めたい。

 終息後の宿泊客の回復は、客層によりまだら模様となることが予想される。早期に回復が想定されるのが国内個人客である。自粛疲れによる旅行意欲の増大や景気刺激策により、国内旅行は終息後すぐに普段以上に活発になると考えられる。

 次に回復が予想されるのが国内法人客である。出張需要の回復は比較的早く始まると想定されるが、法人客全体の回復は個人需要よりも3カ月から6カ月遅くなると予想される。

 近隣アジアの観光客は、外出規制が緩和された中国国内で観光地が大混雑したことを見ても、早期の需要回復が期待される。渡航制限が解除されれば、1、2カ月で回復が始まるだろう。場合によっては国内法人客の回復よりも早い可能性がある。
 欧米からの観光需要は、アジアから感染が始まったことから警戒され、本格的な回復は1年以上を要すると予想される。

 客層により売り上げ回復に大きな差が発生すると想定されるため、従来の客層にこだわらず、獲得しやすいターゲット顧客へ軸足を移すことをおすすめする。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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