【観国之光 270】G20観光相会合 観光公害解決の一歩に 本社論説委員 内井高弘


31の国・地域、国際機関の代表が集まった(10月26日、ニセコHANAZONOリゾートで)

 10月26日、主要20カ国・地域(G20)の観光大臣が北海道倶知安町に集まり、観光産業の持続的な成長に向け話し合った。その成果をまとめた宣言も採択され、無事閉会した。

 観光大臣会合がG20の正式な関係閣僚会議に位置付けられたのは今回が初めてで、その舞台に日本がなったことは、観光立国に取り組む政府はもちろん、民間にとっても自信を深めるきっかけになったのではないか。

 招待国などを含めて、実に31の国・地域、国際機関から観光施策を担当する大臣や幹部が参加した。北海道の大自然に触れ、日本の魅力を認識し、国・地域に帰って日本の良さをPRしてほしいものだ。

 会合では観光が世界の経済成長をけん引し、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することを確認した。観光の発展は確かに経済的な恩恵をもたらしてきたが、一方で増えすぎた観光客による混雑、地域住民との摩擦、環境破壊といったマイナス面も目立っている。

 いわゆる「観光公害」(オーバーツーリズム)で、各国共通の悩みのようだ。例えば、スペインのバルセロナやイタリアのベネチアでは観光客の増加で交通混雑や騒音トラブルが起きている。観光地への入場規制を設ける自治体も出てきているという。

 日本も例外ではない。京都市のオーバーツーリズムは有名で、最近では祇園周辺の私道で許可のない写真撮影を禁止する動きも出ている。迷惑を顧みない行為は後を絶たない。田園風景が美しい北海道の美瑛町では、風光明媚な丘が農地であることに無理解な客が増え、写真を撮るために無断で立ち入り、畑を荒らしているという。

 会合ではオーバーツーリズムについて、問題意識を共有したのが一定の前進と受け止められている。克服に向け、「訪問者と地域社会双方に恩恵のある観光マネジメントを進める」としたが、解決に向けどういった手立てを講じるのか、具体策に踏み込めなかった点は残念だ。

 共通の数値目標や規制を設けて集客を抑制し、環境を守る発想が必要ではないか、との指摘もある。徴収が始まった国際観光旅客税をオーバーツーリズム対策に充てることも考えたい。同時に、「量から質への転換」を真剣に考える時期に来ている。

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