【観国之光 229】築地場外市場 観光拠点として生かそう 本社論説委員 内井高弘


外国人観光客にも人気が高い築地の場外市場。場内がなくなった影響はどう出てくるだろうか

 世界最大級の水産市場である築地市場(東京都中央区)が6日、83年の歴史に幕を閉じた。11日から、豊洲市場(江東区)での営業が始まった。土壌や地下水の汚染不安は拭いきれないが、食の安全と消費者の安心を勝ち取るために、市場関係者の一層の奮起を期待したい。

 築地には水産市場としての顔のほかに、東京の観光スポットというもう一つの顔があった。その代表的な風景がマグロ競り見学だ。多くの観光ガイドブックにも掲載され、近年は外国人観光客の姿も目立っていた。
 築地はプロが売買を行う「場内」と、一般の買い物客が買える「場外」に分かれていた。

 場外市場は縦130メートル、横400メートルのエリアにすし店や飲食店、土産物など約460の店が軒を連ね、昔ながらの雰囲気も残す。テレビのグルメ番組でも頻繁に取り上げられ、行列ができる店も少なくなかった。

 場外市場は場内移転後も現在地にそのまま残る。ただ、「場内あっての場外であり、今後も築地ブランドが通用するのか、大きな転機を迎えている」という声も聞こえてくる。

 銀座は外国人観光客にも人気の土地柄。和光や三越がある銀座4丁目の交差点に立てば多くの外国語が聞こえてくる。築地はそこから歩いて10分ほど。歌舞伎座、インド風建築の築地本願寺も側にある。まさしく一大観光スポットだ。

 場内が移転しても一部の業務用の仕入れに対応する仲卸業は築地に残る。生鮮市場の「築地魚市場」や水産物の産直市場と飲食店が入る「築地にっぽん漁港市場」もあるだけに、このエリアの魅力がなくなることはないだろうが、場外市場の立ち位置を明確にし、外に向けアピールしていく必要があるのでないか。

 豊洲市場でも人気の競り見学はできる。が、少し高い位置から競り場を見下ろす見物客用のデッキからの見学であり、臨場感には欠けそうだ。
 一方、豊洲市場で注目されるのが、2020年の東京五輪・パラリンピック後に着工される観光拠点「千客万来施設」(千客)だ。8月には運営業者、万葉倶楽部と東京都が施設整備にかかる合意書を締結した。

 計画によると、千客は水産仲卸売場棟(6街区)に入居し、商業棟および温泉・ホテル棟は22年12月に完成する。開業は23年になる見込みだ。6街区にはこのほか、飲食店約22店舗、物販店約80店舗が入居する予定。

 豊洲市場が東京の新たな観光スポットとなるかどうかは不明だ。都がどこまで観光客を意識しているのかもよく分からない。築地場外市場と豊洲市場、観光面でも切磋琢磨してくれればいいのだが。

【内井高弘】


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