【焦点課題】ジェイアール東海ツアーズ代表取締役社長 佐藤一哉氏に聞く


佐藤一哉社長

JR東海ツアーズの取り組み

新基幹システムを活用 静岡DC機に連携深化

 ――社長に就任し、半年が経過したが。

 「昨年6月に着任以降、大規模な自然災害が相次ぎ、当社の主力商品である西日本エリアへの旅行需要が多大な影響を受けた。10月以降は持ち直すも、1月末時点ではまだ前年割れしており、厳しさを実感している。着任前はJTBの常務を2年務め、経営改革に関わった経験を生かす時。東海道新幹線を中心とした企画商品など得意分野をさらに強化するとともに、JR東海グループの旅行会社としての優位性を最大限発揮しながら、新たなビジネスモデルを構築しなければならない」

 ――現在の取り組みは。

 「最重要課題として、約2年掛けて開発してきた新たな基幹システム『プラネットⅣ(フォー)』がこれから稼働する。価格変動型の商品造成が可能となったほか、人の手に頼る部分も多かったウェブ販売業務を効率化する。また、宿泊単品の取り扱いのウェブ化により、販売力、在庫消化率を高めていく。新しいコンテンツ開発、需要開拓も進めている。スマホゲームとタイアップした商品は、女性若年層の新規顧客を獲得した。参加者の9割が当社の初めての利用者だ。参加者が体験をSNSで情報拡散し販売につながる相乗効果もあった。法人営業では、JR東海が保有するリニア・鉄道館の営業時間外の貸し出しを始め、JTBのAユニット(団体用旅行企画)にも入れていただくなど、当社としての新しいビジネスモデルとなった」

 ――中長期の計画は。

 「中長期的な取り組みも進めているが、業界を取り巻く環境が刻々と変わる中では、足元の環境を見極めつつ各年度の計画を作ることがふさわしいと考えている」

 ――JR東海グループの中での役割は。

 「東海道新幹線を中心としたJR東海の座席販売への貢献や宣伝と連携した観光開発など、キャリアエージェントとして旅行部門を担っている。今後は、94万人が入会しているJR東海の会員組織『50+』(フィフティ・プラス)などの資源を最大限生かしていく」

 ――強みは。

 「東海道という観光・経済面で一番濃い地域を、主力商品・営業エリアとしていることが最大の強み。京都、奈良、富士山、伊豆・箱根のほか、両端にはTDR、USJもある。現在は、ウェブが6割、電話が1割、店舗が3割の収入構造。店舗展開は駅中心だが、東京、大阪での店舗数が少ない分、早い段階からウェブ販売に力を入れてきた。出発日の前日まで予約・決済が可能な『新幹線ツアー・ダイレクト』、LINEを使用した誘客など、お客さまの利便性を高めながら販売を拡大していく」

 ――4月からの静岡DCへの取り組みや期待は。

 「昨年10~12月の愛知に続きJR東海エリア内での開催となる。静岡DCを機に、地元との連携を深化し、観光地としての静岡県の魅力発信に中長期的に取り組んでいく。静岡は大学卒業後、NHK記者として勤務した初任地でもありとても愛着ある地域。富士山、浜名湖、お茶、皇室ゆかりの地など、テーマに分け深掘り、コンテンツ化していく」

 ――地方創生は。

 「JR東海と連携し、沿線エリアの観光開発に取り組んでいる。現在、京都に置く西日本旅行企画室で行っている社寺の特別公開など、当社ならではの観光素材の開発を他エリアにも拡大していく。今後は、自治体の観光課題などに対し、グループ内の広告会社であるジェイアール東海エージェンシーなどとも連携しながら、ソリューションを提供していきたい」

 ――ここ2~3年の観光業界の変化について。

 「JTBで経験した経営改革を通じ、旧来のビジネスモデルだけでは生き残れないことを実感した。東海道新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービス『エクスプレス予約』などによる利用が3分の1を超えるなど、交通機関の直販も年々増えている。会社の持続的成長に、ICT、データマーケティングなどの活用は必須だ」

 ――今後の取り組みは。

 「増える国内外の旅行需要に対し、OTAではできない当社ならではの強みにさらに磨きを掛けて販売していく。エクスプレス予約などとの連携も検討課題。旅行会社全体の経営体力の向上の観点から、他社とも意見交換を深め、協力することも必要だ。来年4月に営業開始30周年を迎えるが、プロパー社員が8割となり要職者も増えた。今後は実務能力に加え、経営全体を俯瞰(ふかん)し主体的に行動できる人材を育成する」

 ――組織の将来像は。

 「お客さまに『ドキドキ・ワクワク』感を届けるのが旅行会社の重要な役割。そのためには、社員が『ドキドキ・ワクワク』しながら働くことが何よりも大切。社員の個性と持ち味を生かしつつ、新基幹システムの活用などにより、よりクリエイティブな業務に集中できる環境を作り上げたい」

さとう・かずや=日本放送協会を経て、1990年に東海旅客鉄道(JR東海)入社、人事部人事課長、営業本部副本部長などを歴任。2016年6月にJTB常務取締役就任。18年6月から現職。

【長木利通】

 
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