【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」7】女子大生が考える温泉とインバウンド 温泉エッセイスト 山崎まゆみ


 昨年度に引き続き、本年度も跡見学園女子大学で温泉と保養の授業を受け持っています。昨年度は157人が履修してくれましたが、本年度は211人。通常の教室では狭くて、アトミブロッサムホールを使って授業をしています。毎回200人もの女子大生を前に1時間半話すことは相当なパワーが必要ですが、1番の楽しみは最後に提出してもらう授業の感想です。

 履修理由を尋ねてみると、「温泉は年老いた人のものという印象があるが、好き」「いつも両親と温泉旅行に行くから、詳しくなって自慢したい」、あるいは単純に「いい温泉を知りたい」といった実用情報を知りたいという声が多いです。そうした気軽な理由にしても、温泉に興味を持ってもらえるのは喜びです。彼女たちは未来の温泉地を支える女性、そして近未来のお客さんになってくれる、そんなふうに思いながら毎回授業をしています。

 全15回の授業構成は、まず前半は歴史や温泉分析表の読み方などの基礎知識をみっちりと。「湯治」を初めて知ったという学生さんが大半だったのにはびっくり。

 先日はインバウンドにおける温泉地や旅館の活用についてでした。好事例として挙げたのは戸倉上山田温泉亀清若旦那のタイラーさんが源泉が100年続くようにと願い手製で作った「100年風呂」。加えて、城崎温泉インバウンド部に所属するコリンさんの存在などを紹介しながら、インバウンドを考える際には、外国人の声を聞きながら進めることが大切であることを話しました。

 日本をよく知る外国人を通して、日本古来の風習や、文化をきちんとした解釈付きで伝えると、理解してもらいやすい。これらが授業の要でした。

 私自身、どうやったらもっと外国人に温泉でくつろぎ、旅館を利用してもらえるか考えていますので、学生さんに問うと「外国人スタッフを増やした方がいい」という声が圧倒的。「外国人の交流の場を温泉地にしたらどうか」「移動中の電車の中で足湯や手湯など、まずは服を脱がずに、気軽に温泉を体験してもらえるようにする」など。私が共感したのは「空港に温泉博物館を作ってみたらどうか」という意見。これは以前から私も思い描いていたことでした。

 日本の玄関口である空港やターミナルで入浴方法などの映像を流す。その映像も漫画やアニメーションといった日本のポップカルチャーで伝える。さらに旅館滞在中のシミュレーション、足湯や手湯も用意する。足湯カフェをベースに、温泉を説明するコーナーを設けてもいいですね。

 今回の授業では、どうしたら外国人が旅館を利用するようになるかを学生さんに問いました。本授業「温泉と保養」では、「温泉をデザインする」をテーマに最終レポートを提出してもらいます。デザインするとは、授業を通じて学んだことを基礎に、日本人も外国人も、どうしたらもっと温泉を訪れるようになるか、未来の温泉地を描いてもらうのです。

 そして最近は「slido」を使用し、学生さんからの意見や質問を授業中でもリアルタイムに発信してもらい、キャッチボールをしながら進めています。

(温泉エッセイスト)

 
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