【地方創生トップインタビュー】高知県 尾﨑正直知事に聞く


高知県観光の現況と今後の施策

歴史、食、自然の魅力 さらに磨き上げる

「幕末維新博」第二幕も 坂本龍馬に焦点

 県外観光客入込数が昨年に過去最高の440万人を記録し、今年はその原動力となった「志国高知 幕末維新博」の第二幕が4月21日にスタートする高知県。観光振興の先頭に立つ尾﨑正直知事に現況と県の施策を聞いた。(聞き手=本社・板津昌義)

 ――高知県にとって観光産業の位置づけは。

 高知県は、人が減るに従って足元の経済が縮むという現象が1997年から今日まで続いている。そこで、外から力をつかみとってくる、「地産外商」という取り組みを徹底してきた。地に産する物を生かして外で商う。観光は、お客さまに来てもらい、金を落としてもらい、それによって外貨を稼ぐ。観光も地産外商の取り組みの一環だ。

 若い人を地方に戻していくためにも三次産業の振興が非常に大事だ。そういう意味で、観光産業は地方にとって非常に有効な三次産業だ。

 ――昨年の観光客の実績はどうだった。

 県外観光客入込数のデータは県境通過ベースで、できるだけ正確にデータを把握しようとしている。それによると昨年来訪したお客さまの数は440万人だった。高知県の観光客数はだいたい300万人から310万人ぐらいで推移してきた。大河ドラマ「龍馬伝」が放送された2010年が435万人で、これが過去最高だったが、昨年は大河ドラマなくして大河ドラマの年を超えた。ちょうど大政奉還150年の年だったから、これを記念して「志国高知 幕末維新博」を展開した。その成果があった。

 ――今年は、その幕末維新博の第二幕が4月21日から始まる。

 今年は明治維新150年ということで、一つは、明治の時代に高知が自由民権運動と産業革命にどういう役割を果たしたかを多くの皆さんに知ってほしい。この二つの流れの元になったのは誰かと言えば、やはり坂本龍馬に行き着く。彼が船中八策、さらに新政府綱領八策で示した自由民主主義体制、さらには貿易立国を追求していこうという考え方が一つのベースになって後々の板垣退助、岩崎弥太郎の取り組みに影響を与える。

 幕末維新博の第二幕でも、自由民権運動や産業革命に至る業績の源として坂本龍馬に焦点を当てたい。4月21日に「坂本龍馬記念館」がグランドオープンする。本物の資料でもって坂本龍馬の生涯をたどることができる。

 坂本龍馬に影響を与えた人物がジョン万次郎だ。4月1日に土佐清水市にある「ジョン万次郎資料館」がリニューアルオープンした。ぜひ多くの人に来館してほしい。

 ――観光振興を図る上での課題は何か。

 観光地を意図的に作っていくことが大事だ。そして、これを効果的に売る。来てくれた方をもてなして、リピーターになってもらう。つくる、売る、もてなす、この取り組みの改善を積み重ねながら、観光地を磨き上げることが非常に重要だ。

 大河ドラマの年とその前後は「歴史」を中心に観光地づくりに励んできた。その後、幕末維新博までの間は「食」を前面に出して観光地の磨き上げを行ってきた。大政奉還150年、明治維新150年ということで昨年、今年はまた歴史をテーマに観光地を磨き上げる努力をしている。

 もう一つ、高知にとってはもう一段磨き上げを図っていきたい分野があって、それは「自然」だ。まだポテンシャルを十分に生かしきれていない。仁淀川や四万十川を生かしたカヌーなどのアクティビティ、さらには海を生かしたキャンプ場などいろいろな構想を練っているところだ。ポスト維新博として、来年は自然をより前面に出したキャンペーンを展開していきたい。自然観光を磨き上げることができれば、私たちの課題であるところのインバウンド観光の振興にもつなげていける。

 ――観光客を受け入れる県内の旅館・ホテルなどに要望はあるか。

 一言で言うと本当に感謝している。高知は食べ物がおいしいという評価を得ている。リピーター率が比較的高いのも、旅館・ホテルの皆さんのおもてなしのおかげだ。引き続き食のレベル、おもてなしのレベルを維持し、リピーター率を高いレベルで確保していただきたい。

 高知県はインバウンド観光をさらに強化していこうとしている。おもてなしについても、より難易度の高いサービスが求められる点も出てくる。県も頑張るのでぜひ一緒に進めていきたい。

 ――一方、県外の旅行会社に要望することは。

 高知県は、高知城歴史博物館や坂本龍馬記念館といった全国に誇れる歴史施設を持っており、さらに坂本龍馬が遊んだ川や中岡慎太郎が日々勉強のために通った山道であるとか、本物の場所がたくさん残っている。

 しかし、例えば、龍馬脱藩の道を実際に歩くと素晴らしいが、これが大規模のテーマパークのように派手派手しいかと言うと決してそうではない。県外の旅行会社のプロの目をもって地味に見えるが実はいぶし銀のような魅力を持っている観光地の本物の魅力をぜひ発掘、発信してほしい。

 自然体験型の観光も、これからさらに磨き上げを図っていくのでぜひ県外の旅行会社の皆さんに育てていただきたい。

 ――観光振興のリーダーとして意気込みを。

 観光は、人口減少に悩む地方こそ大事だ。高知県は観光振興に今後も強力にコミットし続ける。高知県は歴史も食も自然も素晴らしい魅力を持っている。多くの皆さんにしっかり味わってもらえるように磨き上げて、PRするという取り組みをこれからも続けていく。

 
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