【地方創生トップインタビュー】三重県 鈴木英敬知事に聞く


三重県の鈴木英敬知事

サミット後の三重県観光戦略

消費額の拡大重視 観光を「稼げる産業」に

 2016年に「G7伊勢志摩サミット」が開かれ、国内外で知名度が上がった三重県。観光入込客数、消費額も順調に推移している。鈴木英敬知事にサミット後の県の観光戦略を聞いた。(聞き手=本社・森田淳)

 ――伊勢志摩サミットの成果をどう捉えるか。

 直接的な経済効果が県内で483億円、県外も合わせると1070億円。パブリシティ効果が国内外で合計3098億円。2008年の洞爺湖サミットの時と比べると、インターネットの普及もあり、非常に大きな数字になっている。またサミット後についても、観光客や国際会議の増加による経済効果が1489億円となっている。

 特に五つのことを申し上げたい。一つが観光入込客数の増加。日帰りも含めた観光客数はサミットの翌年に4219万人と過去最高になった。

 二つ目がMICE。今まで年間1~2件という状況で、サミットを行った年に目標値を倍増の4件としていた。それが16年と17年の2年間で25件となり、今年は予定も入れて既に16件入っている。
三つ目がクルーズ。ダイヤモンドプリンセスをはじめとした外国のクルーズ客船が三重県に初めて寄港することになった。

 四つ目が日本酒。サミットの時に3回、食事会があったのだが、乾杯酒も食中酒も全て三重の酒を使ってもらった。その宣伝効果もあり、全酒蔵トータルの出荷量が非常に増えた。

 最後がグローバル教育。サミットを行った年にジュニアサミットという高校生のサミットも行ったのだが、グローバルに活躍したいという思いが芽生えたのか、海外へ留学や研修に行く県内の高校生の数が15年度は350人だったのが、17年度は476人に増えた。

 サミットが県の知名度向上や、観光客が訪れ、また、国際会議を行う場所としての存在感を示す大きなきっかけになった。

 関わったメンバーの自信にもつながった。今回のサミットは無事故で逮捕者ゼロ。サイバーディフェンスも含めて、セキュリティが完璧だった。さまざまな面で成果があった。

 ――三重県において、観光はどのような位置付けにあるか。

 私が知事になってから、観光振興の条例を策定し、それに基づく観光振興基本計画を作った。計画でうたっているのは観光の産業化。お客さまにただ来てもらえればいい、というのではなく、地域にしっかりとお金を落としてもらえるような産業にしていこう、ということだ。

 観光振興基本計画で最も重視している指標は観光消費額。17年は5237億円で、神宮式年遷宮があった13年の過去最高である5342億円に次ぐ数字だった。

 三重県は生産年齢人口1人当たりの製造品出荷額が全国2位だ。産業の中で製造業の占める割合が大きい。製造業の中では自動車などの輸送機械のシェアが大きく、県内総生産の7%程度。観光も3%程度を占めており、日本を代表するモノづくりの数字に匹敵する。

 そのため、観光は非常に重要で、それをさらに稼げる産業にすることが極めて重要だと認識している。

 ――今、最も力を入れている観光政策は。

 一つはインバウンド。何か特色を出さなければと、ほかの県ではあまり行っていない「ゴルフツーリズム」に力を入れている。今年は国際ゴルフツアーオペレーター協会主催の「日本ゴルフツーリズムコンベンション」を誘致し、この10月に欧米豪を中心とした海外の旅行エージェントに観光地やゴルフ場を視察してもらった。タイ・パタヤのゴルフコース協会とはゴルフツーリズムに関する協定を結び、相互の送客や、ツーリズムの質の向上に取り組んでいる。

 MICEにも力を入れている。伊勢志摩サミットを契機とした国際会議の誘致に取り組んでいる。
さらに、バリアフリー観光。遷宮の年に「日本一のバリアフリー観光県推進宣言」をさせていただいた。障害を持つ人が、「ここだけしか行けない」というのではなく、「ここにはこういうバリアがあるけど、こういうサポートが受けられます」ということを案内した「みえバリ」というガイドブックをNPO法人の伊勢志摩バリアフリーツアーセンターから発行している。

 最後に観光防災。観光客の命を守るための避難訓練を観光事業者と行っているほか、外部から講師を招いて研修会を行っている。「防災みえ.jp」という防災情報のサイトでは日本語のほか、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語で発信している。

 ――観光客の誘致や観光消費額の拡大に向けて課題と、その解決策は。

 延べ宿泊者数に占める外国人の割合が少ない。全国平均は15~16%だが、三重県は4%だ。国内の観光客が多いということもいえるが、外国のお客さまは消費額が大きいので増やしていきたい。そのために行わなければいけないのは、まずは情報発信。そしてデータに基づくマーケティングと人材育成。

 宿泊施設の魅力向上も必要だ。例えばキャッシュレス化やトイレの洋式化。お客さまがストレスフリーに旅行できる環境を作りたい。リクルートライフスタイルと組んで宿泊業の働き方改革にも取り組んでいる。働く人の満足度が高まれば宿泊客の満足度も高まるはずだし、引き続き取り組みたい。

 インバウンド向けのアクティビティーもさらに充実させたい。県では体験メニューを提供する事業者のネットワーク構築や、アウトドア用品を販売するモンベルと協定を結んで、連携した取り組みを進めること等を通じて、体験メニューの充実に取り組んでいる。

 ――県内の観光事業者、県外の旅行業者などに要望があれば。

 県内の方には、先ほど申し上げたお客さまへのストレスフリーな旅行環境整備。そして人材確保やおもてなし向上の観点からも、働き方改革に意識を持って取り組んでいただきたい。

 県外の方には、三重県のさまざまな魅力をぜひキャッチしていただきたい。観光情報サイト「観光三重」は、都道府県公式観光情報サイトの閲覧数ランキングで、昨年はスマートフォンからが3位、パソコンからが5位だった。結構充実していると思うが、さらに充実させたい。

 ――最後に、改めて三重県の魅力PRを。

 三重県には日本人の心のふるさと伊勢神宮がある。インバウンド向けには忍者や海女といった三重県ならではのコンテンツ。東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも負けないナガシマリゾートもある。

 そして何といってもおいしい食べ物。松阪牛や伊勢えびだけではない。最近評価が高いのは豚肉。「みえの食国際大使」を務めているフレンチの三國清三さんや中華の脇屋友詞さんにも褒めてもらっている。ぜひ、三重に来て味わっていただきたい。

三重県の鈴木英敬知事

鈴木 英敬氏(すずき・えいけい)1974年8月15日生(44歳)。東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2011年4月、三重県知事に初当選。15年4月に再選、現在2期目。

 

 

 

 
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