【口福のおすそわけ 392】パンチェッタ♪ 竹内美樹


竹内氏

 知人のK氏から、お手製の「パンチェッタ」をいただいた。しかも、あの高級なイベリコ豚だ! 放牧されドングリを食べて育ったその脂身は、オレイン酸豊富でサッパリして甘味がある。包みを開くと、表面にまとったローズマリーがふわっと香り、深いルビー色と白のしま模様の肉塊が顔を出す。見事な出来栄えに感服。

 パンチェッタとは、イタリア語で豚バラ肉のこと。その塩漬けもパンチェッタと呼ばれる。ベーコンも原料は同じ豚バラ肉だが、違いは加熱処理してあるか否か。前者は塩漬け後そのまま乾燥、熟成させるが、後者は燻煙(くんえい)を施す。パンチェッタが「生ベーコン」とも言われるゆえんである。

 生ハムも同様に非加熱だが、使用する部位はモモ肉。世界三大ハムとされるイタリアのパルマ産「プロシュット・ディ・パルマ」、スペインの「ハモン・セラーノ」、中国の「金華ハム」、全て豚モモ肉の生ハムだ。

 さて、K氏にその作り方を尋ねてみた。次の通りだ。(1)味が染みるよう、肉全体にフォークで穴を開ける。(2)肉の重さの4%の塩を擦り込み、こしょうとハーブを載せる。(3)脱水シートまたはキッチンペーパーで隙間なく包み、さらにラップで包んで冷蔵庫で熟成。初めの2~3日はシートを毎日取り換え、その後は2~3日ごとに交換。(4)およそ10~14日で肉の重さが最初の8割くらいになれば完成!

 道具や器、手を常に消毒することが重要だそう。雑菌が付くと腐敗してしまうからだ。火を入れずに生肉を放置するのは、かなり神経を使うと想像がつく。

 いやはや、恐ろしく面倒な上、時間も掛かるではないか。あまりにおいしそうだったので、実は作り方を伺う前に半分食べてしまったのだが、残りはチビチビいただくことにしよう。

 食べ方の王道は、やっぱりカルボナーラかアマトリチャーナだ。どちらも豚の脂のうま味を生かしたパスタで、パンチェッタもしくは豚ホホ肉の塩漬け「グアンチャーレ」を使う。

 トマトソースの気分だったので、今回はアマトリチャーナに。ラツィオ州にある「アマトリーチェ」という村出身の料理人がローマで作り、人気を博したという説も。羊乳のチーズや豚肉の加工食品づくりが盛んな地で、羊乳のチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」と豚のパンチェッタやグアンチャーレ入りの郷土料理として、ラツィオ州伝統食品に指定されている。

 パンチェッタをじっくり炒め、白ワインをふりかけてうま味を引き出したら、トマト缶を投入。少し煮て濃度が上がってきたら、おろしたペコリーノ・ロマーノを混ぜ、パスタと和えるというシンプルなレシピ。

 日本ではタマネギを入れるが本場では入れず、豚の脂とチーズの濃厚な味をダイレクトに楽しむ。確かに、パンチェッタからにじみ出た強いうま味や甘味があれば、他は何もいらない。代用のベーコンとはこんなにも違うんだ!と改めてそのポテンシャルに感動、口福のひと時だった。K氏に感謝、ごちそうさま!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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