【体験型観光が日本を変える224】閉幕した五輪を振り返る 藤澤安良


 東京都が緊急事態宣言中でありながら、東京オリンピックが開催され、多くの課題を残して幕を閉じた。中止論も少なくない中、日本選手のメダル獲得数が史上最多となり、その活躍に救われた感がある。

 そして、間もなくパラリンピックが始まるが、首都圏は新型コロナ感染者数が増加し続け、こちらも過去最高を更新している。結果、医療体制崩壊が迫り、後に修正されたが、一時は中等症患者までも自宅療養などと言い出す始末。

 オリンピックでのコロナ感染防止対策面の課題を早急に克服し、改善しなければならない。

 そんな中、日本選手の活躍は目を見張るものがあり、多くのメダルの陰にそれぞれの選手の汗と涙の物語が存在しており、勇気と誇りと感動を与えてくれた。コロナが猛威を振るう猛暑の中、メダル獲得者も、惜しくも実力を発揮できず残念だった選手、そしてコーチや家族も、役員やボランティアスタッフも、医療・警備など全ての運営関係者の努力の賜物である。しかし、手放しで喜んでばかりではいられない。

 組織委員会の女性蔑視に端を発し、SDGsに絡む、ジェンダーギャップ指数は156カ国中120位と先進国の中で最低である。開閉会式などの企画演出での人権問題で解雇離脱者が何人もでた。感染防止対策の一環としてバブル方式やプレーブックなるものが設定されていたが、そのルールを破って参加資格を剥奪された人もいた。

 ワクチン接種や検査陰性が原則であったが、多くの漏れがあった。その結果、オリンピック関係者の感染者は458人であった。また、会期中に弁当を13万食も廃棄したと発表されるなど、正確に数字を把握する人がいないのかと、その能力が疑われることにもなった。この食品ロスの問題も大きなマイナスイメージが残った。

 日本の夏は蒸し暑いと知らない日本人はいないはずであるが、前日にその気候の問題で会場や競技時間が変更になった。これらの不祥事はほぼ想定通りの結果と見ている。

 災害が起こるたびに、人命を失い適切な対応ができなかった時、想定外だったと言い訳として繰り返してきた日本の政治の歴史がある。

 これからの仕事は、現状を変える力と、あらゆる想定をして備える能力と、多様な事象に適切な対応ができる能力が不可欠である。オリンピックで来日した外国人は数万人に上るが、首都圏の感染拡大は外国人から感染したというより、都市部の、飲食店や繁華街での人流抑制ができていないことにある。

 しかし、欧米では飲食店やイベントや、長距離列車やバス、あるいは航空機などの交通機関の利用も、ワクチン接種と検査陰性が条件となり動きだしている。日本も本格的な稼働に向けて、オリンピック開催の経験を生かし、課題も克服し、国内旅行はもちろん、日本人の海外旅行と、訪日外国人の受け入れの条件を明確にして、一刻も早いその体制整備を望みたい。

 観光経済はオリンピックも夏休みも風前の灯火となった。行楽の秋が幸せで楽しい幸楽の秋となるように。

 
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