【テツ旅、バス旅 28】異色の新路線 鎌倉 淳


 東京都心を走るバスに異色の新路線が登場しました。10月1日に開設された京王バスの052系統です。渋谷駅から新宿駅、四谷一丁目、大手町を経て新橋駅に至り、四谷一丁目、新宿駅を経て渋谷駅に戻ります。

 往路は代官町通り、復路は外堀通りを通るという袋状の路線で、トヨタの最新型燃料電池バス「SORA」で運行します。

 京王バスが都心部で運行するのは近年では深夜バスだけでした。そのため、昼間のバスが大手町や新橋に乗り入れるのはニュースです。さらに最新鋭の燃料電池バスでの運行とあって、バスファンには驚きをもって受け止められました。

 ただし、新宿・新橋間の停留所は往路で三つ、復路で二つときわめて限られます。運行本数は1日3往復のみ。となると、実用的な路線とはいえず、都心部で京王バスの存在感を示す象徴的な路線の雰囲気が漂います。

 京王バスは、2022年8月から順次開業する八重洲の新高速バスターミナルの運営事業者に選ばれています。そのため、新路線はバスターミナルの開業を見据え、八重洲付近を運行すること自体が目的ではないか、と見る向きもあります。

 その真偽はわかりませんが、実際に乗ってみると、なかなか楽しい路線です。都心部では「快速運行」なので、中央車線を疾走して都バスを追い越すという、ふだん乗る路線バスではあまりない体験が味わえます。乗り降りが少ないので車内は落ち着いていて、新宿御苑や皇居のお堀、数寄屋橋交差点など車窓の変化も豊かです。

 ただ、新宿・新橋間の利用者は少なく、わずかに乗っていたのも、このバスを狙ったファンばかりと見受けられました。都心部で1日3本のバスを利用する一般客はほとんどいないのでしょう。

 停留所が少ないので所要時間は短く、とくに帰路の新橋駅から新宿駅までは35分程度。電車より時間はかかりますが、駅での階段の登り降りもありませんし、座って移動できるなら悪くありません。乗る前は実用性に乏しい路線と考えていましたが、乗ってみると見方が少し変わり、「快速バス」という公共交通機関の選択肢が、都心部にあってもいいのではないか、とすら感じました。

 観光地の最寄りバス停を経由すれば、インバウンド客にも使いやすそう。さらなる新路線にも期待したいところです。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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