【コロナ新時代への提言】加賀屋社長 小田與之彦氏


小田氏

ポジティブな非日常の提供を

 新型コロナウイルスの感染拡大によって日本の観光宿泊産業は甚大な影響を受けており、何一つ良いことなどないと言っても過言ではない。唯一あるとすれば、われわれの産業は幅広い経済波及効果を持っており、地域経済と雇用を守るために重要な役割を果たしているということと、観光宿泊業を対象とした景気対策は即効性が高いということが、Go Toトラベルキャンペーンなどの実施を通じて広く社会に認識されたことであろう。観光宿泊産業に携わる者はそのことを誇りに思うと同時に、21世紀のリーディング産業の一員としてより大きな責任を果たす覚悟で臨むべきだと考えている。

 ウィズコロナ・アフターコロナ時代における旅行の形態は大きく変わることは間違いない。出発前や旅行中での非接触、デジタル化、ヴァーチャル化が進み、また団体旅行から個人旅行化への進行は速度を増すであろう。その中で、これまでと変わらない、あるいはこれまで以上に旅行者からの支持を受けるためには「ポジティブな非日常の提供」が重要になってくると考えている。コロナの感染拡大によって人々の日常生活は一変した。これまで普通にできていたこと、例えば友人との会食はやってはいけないこと、あるいは引け目を感じながら人目をはばかって行うことになってしまった。多くの人が閉塞(へいそく)感を抱えて日常生活を送っている。そのような時こそ、旅行が人々の心を明るくする役割を果たすべきである。

 日本旅行業協会(JATA)の田川博己氏(前会長、特別顧問)がたびたび言及される「旅の五つのチカラ」の一つに健康の力というものがある。それは日常からの離脱による新たな刺激や感動、遊・快・楽・癒やしなどを通じ、体や心の活力を得、再創造へのエネルギーを充たすというものである。まさしく、観光業界が今すべきことは、疲れ果てた日本人(そして先々は訪日客)のこころとからだを元気にするために、自らの経営資源を集中投入することではなかろうか。

 私は旅館経営に携わっている。旅館の役割は、お客に対し明日への活力を注入し元気に、そして前向きになっていただくことである。また旅館はいまだに日本文化を色濃く残す場所でもあり、日本文化にとって最も重要な言葉である「誠実」と「惻隠(そくいん)」を大切に、人と人の温かみのあるつながりの中で、おもてなしを通じてお客さまのご満足を追い求めてきた。これからは物理的な距離には配慮しつつ、心の距離はこれまで以上に近づけて癒やしと安らぎを提供していきたい。

 観光業こそがポストコロナの時代に、日本人に心の明るさを提供できる。われわれは、WBCでの侍ジャパンの優勝、なでしこジャパンのW杯優勝、そして今年の松山英樹選手のマスターズでの優勝に勝るとも劣らない力を持っている。

 
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