
沖縄、ニセコ、奄美などから有識者が登壇したパネルディスカッション
「地域のための観光」で課題に対応
サステナブル・ツーリズムへの関心が高まる中、観光・交通運輸に関する研究機関の運輸総合研究所、国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所、観光庁は8日、「観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム」を東京都内で開催した。地域が抱える経済、社会・文化、環境などの持続可能性に関する課題に対して観光政策はどうあるべきか。基調講演やパネルディスカッションを通じて、持続可能な観光の推進、観光を活用した持続可能な地域づくりの在り方を探った。
「手引き」を策定
運輸総合研究所は観光庁やUNWTO駐日事務所と連携し、検討委員会を設置して、「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き」の策定を進めている。「手引き」では、地域の目指す姿の共有、課題の抽出、解決への取り組み、指標を活用した効果測定、測定結果に基づく改善というサイクルの実践を解説。今年度末までにまとめる予定。
検討中の「手引き」案について運輸総合研究所の主任研究員、小泉誠氏が報告した。持続可能な地域経営とは、住み続けたくなる地域であるために、経済、社会・文化、環境の全てが持続可能となるように総合的に取り組み続けることと説明した。
「持続可能な地域経営を行うためになぜ観光か。なぜ自治体の政策の中に観光政策を位置付ける必要があるのか」については、「観光政策は総合政策」として、(1)観光は裾野が広く、地域の人材、資源の有効活用が図れる(2)観光を考えることは多くの産業を考えることにつながる(3)地域への誇りが醸成できる(4)交流人口・関係人口をつくることができる―などを挙げた。
「手引き」は、観光を活用した持続可能な地域経営について、取り掛かる準備、実現へのステップ、支える仕組み、先進事例の各章で構成する予定。準備に関しては、取り組む意義や目的の明確化をはじめ、既存計画や指標・データの整理、他部署や関連事業者の参画などの重要性を指摘した。
実現へのステップは11項目に分け、具体的に「手引き」で解説する。11項目のテーマは次の通り。(1)対象地域の決定(2)利害関係者の参画(3)観光資源と現状の課題の把握(4)なりたい姿の共有、今後の課題の明確化(5)重点課題の特定、合意形成(6)重点課題解決への取り組みの検討・共有(7)指標の検討(8)指標の計測手法の具体化(9)取り組みの実施、データ収集、指標の計測(10)指標の推移分析と公表(11)指標や運営体制の改善。
国際的な動きも
持続可能な観光に関する国際的な取り組みについては、UNWTO駐日事務所の鈴木宏子副代表が紹介した。
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