被災地・氷見観光の現状 氷見市観光協会 代表理事会長 松原勝久氏に聞く


氷見市観光協会 代表理事会長 松原勝久氏

修理費の支援が先決 「応援割」の恩恵薄く

 ――1月1日の地震発生時はどこにいましたか。

 「高岡市内にいました。氷見の自宅から10キロほど離れた場所でしたが、すごい揺れが何度も続き、非常に怖かったです。こんな揺れは初めて体験しました。氷見市は震度5強でしたが、体感的にはシェーカーの中で振られている感じです」

 「自宅は内壁がひび割れ、物が散乱。屋根瓦もずれ、灯籠が倒れていました。周辺の道路では液状化現象が起きていました。当初収拾のつかない状態でした」

 ――いま協会員数は。

 「会員事業者は約200社です。宿泊施設については温泉旅館・民宿、ホテルなど合わせて40軒ほど。ナトリウム―塩化物泉という泉質が『美人になる湯』として女性客に特に好評で、総じて『氷見温泉郷』と呼んでいます。あとはブリなど水産物や氷見牛などが自慢の地域ですが、地震で全ての施設が何らかの被害を受けました。被害額が1千万円のところもあれば億円単位のところもあり、非常に深刻な状況です」

 ――地震発生から1カ月ほどがたちました。

 「宿泊施設については9割ほどが営業再開していますが、修理をしながらという具合で、完全復旧営業というわけではありません」

 ――キャンセルも出ているようですね。

 「氷見市内の各宿泊施設の1カ月予約はほぼキャンセルとなり、収入はありません。2月からは国や自治体の調査隊に支援隊、さらに復旧作業に携わっている民間企業の宿泊先となっており、それで何とかつないでいます」

 「一般のお客さまを受け入れたほうが経営的にはいいのですが、いまは観光客よりも支援隊などを受け入れることが能登全体の早期復旧・復興につながる。皆そういう強い気持ちで受け入れています」

 ――国は北陸4県を対象に、3~4月に「北陸応援割」を実施する予定です。

 「個人的には安心安全を担保し、お客さまに満足いただくためにはまずは修理支援が先決だと思います。甚大な被害を受け、施設修理をしながら、余震も続く現段階では、北陸応援割は能登半島内の観光地としては困惑しています」

 「それよりも国・政府には雇用調整助成金の拡大支給や休業補償などに加え、コロナ禍の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済延長や猶予をお願いしたい。また、新たに追加融資や社会保険料納付の延期、生活を維持するための最低限の支援、廃業にならないようなさまざまな支援を真剣に考えていただきたい」

 「北陸応援割は北陸全体では確かにありがたい話だと思います。補助上限額は1泊の宿泊、または1泊の交通費付き旅行商品で2万円ということで、4万円の内容を2万円で楽しめることから、お客さまの心理としてはせっかくだから高額な宿に泊まろうとします。氷見は支援隊や作業員らを内容に応じて5千円から1万円で受け入れています。しかしそれは旅行割の対象ではありません。従って能登半島、氷見などではこの北陸応援割の恩恵は薄いのです」

 「北陸の観光再生には確かに必要と思いますが、現段階の氷見にとっては言葉はきついですが、ありがた迷惑といえなくもありません。地域事情を踏まえた支援策をお願いしたい。まずは事業維持のための資金支援や金融支援、つまりは完全復旧のための支援、それが先です」

 ――3月16日に北陸新幹線が延伸開業します。

 「開業効果は大きく、ビジネスチャンスと捉えて有効活用するのもわれわれの仕事だと思います。観光協会としても商品化を考え、特に関西方面からのお客さまをどう取り込むかが課題でした」

 「西方面から氷見に行くには、関西方面からは特急サンダーバードで金沢駅まで来て、金沢駅から新幹線に乗り新高岡駅で下車。新高岡駅からバス、またはJR西の城端線に乗り、高岡駅で氷見線に乗り換えます。また、在来線で金沢駅から時間をかけて高岡駅から氷見駅という方法もありますが、正直、どちらもアクセスが良くありません(笑い)。しかし、延伸開業以降は新しい敦賀駅で新幹線に乗れば新高岡駅まで一本ですので、その意味では便利になり、目新しさで利用者は増えるはずです」

 「今後は城端線・氷見線がJRから3セクの『あいの風とやま鉄道』に移管され、直通運転となります。車両も新しく新型電気式気動車が導入されます。これも関西方面のお客さまへのアピールポイントとなり、観光推進の大きな転機になると期待しています」

 ――いま何を伝えたいですか。

 「当然ですが、被災状況は地域によって異なります。マスコミにはその事実・真実を報道してほしいですし、また政府はそこをしっかり調査して見極め、被災とそれぞれの状況に合わせたきめ細やかで適切で効果的な支援を実施していただきたいと思います」

氷見市観光協会 代表理事会長 松原勝久氏

 
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