有馬温泉の陶泉御所坊(兵庫県神戸市)はこのほど新たに、「考槃居スパースイート」を開設した=写真。湯殿「偲豊庵」に隣接する部屋にベッドルームやシャワーブースなどを整備したもの。料金は食事別で、1室税込み55万円からの予定。来年開幕の大阪・関西万博などで来日するエグゼクティブ層の利用を狙いたい考えだ。
阪神・淡路大震災後に復興を祈念して開いた茶室付きの湯殿、偲豊庵は、有馬温泉を好んだ豊臣秀吉をしのんで作った建物で、庭を望む石敷きの内湯や金泉を引いた露天風呂、五つの水琴窟を備えた中庭や待合室を持つ。
今回の改装では、御所坊グループのプロデュースを手掛けた美術作家、「無汸庵」こと故・綿貫宏介氏が利用していた3部屋を改装。偲豊庵と一体的に利用できるようにしたほか、ベッドルームやリビングルーム、シャワーブースを整備した。ベッドルームにはミニバーを設置。シャワーブースにはレインシャワーを付けたほか、綿貫氏の画をモチーフにしたモザイクタイル画を掲げた。
広さは居室が120平方メートル、庭部分が240平方メートルの360平方メートル。定員は4~5人を想定する。
同部屋の利用者に向けては、ルームサービススタイルの食事などを提供する予定。持ち運びのための専用の木箱や器をあつらえ、神戸ビーフや県北部で養殖が進むスッポンなどを使った特製メニューを供したい考えだ。
同館では現在、館内のスリッパレス化やエレベーターの整備などを並行して実施。顔認証システムの導入なども進め、人手不足の中でもサービス水準を維持できるよう取り組む。
金井啓修社長は「大阪・関西万博を控え、有馬温泉にも国際的なホテルのスイートルームに匹敵するような客室が必要ではないかと考え、スパースイートを整備した。1泊100万円でもいいのではとの声ももらっている(笑い)。たくさん売れる部屋ではないが、ニーズはあると考えているし、宿としての話題作りの一助にもなる。少しずつ利用してもらいながら、サービスや料金などを整えていきたい」と語った。