日本観光旅館連盟、国際観光旅館連盟、全国旅館生活衛生同業組合連合会は9日、政府が法案提出を目指している中小・零細企業などを対象とした金融債務の返済猶予制度について、3団体の会長らが亀井静香金融担当相に会い、早期の法案成立などを求める連名の要望書を手渡した。過去の設備投資に伴う多額の債務返済、景気低迷や新型インフルエンザによる宿泊需要の減少など、旅館業の厳しい経営環境を訴え、返済猶予制度の運用に期待。その他の金融支援策についても実現を求めた。
日観連の近兼孝休会長、国観連の佐藤義正会長、全旅連の佐藤信幸会長が亀井金融担当相を訪問。亀井金融担当相の地元、広島県から日観連の武田和頼副会長(尾道市、竹村家)も同行した。
返済猶予制度の早期実施について、日観連の近兼会長は「3年間の返済猶予があれば、その分を集客対策や部分的な設備改修に充てられ、経営改善に取り組む余裕も生まれる。旅館業の経営の安定が、地域の雇用確保や地域経済の活性化にもつながる」と期待する。
要望書では返済猶予制度の運用にあたって、「返済猶予の対象となった企業に対して、その後の貸し渋り、貸しはがしが起きないよう万全の対策を講じてほしい」とし、猶予適用後の融資にも不利が生じない施策を求めた。
要望に際しては、旅館業をとりまく厳しい経営環境について理解を求めた。要望書では「旅館業は土地、建物自体が商品であり、過去の多額の設備投資資金の返済と固定資産税の高負担に悩まされ、廃業、倒産が後を絶たず温泉街などの地域の崩壊を招いている」と説明した。
さらに景気低迷や新型インフルエンザの影響などで「かつてない宿泊需要の減退に直面している。8割以上の施設が赤字経営であると言われ、せっかくの政府の緊急保証制度も利用できない状況にある」と訴えた。
このほか、厳しい経営環境を踏まえ、返済猶予制度とは別に、旅館業に対する金融施策も要望した。「過去の債務の返済期限の延長、もしくは一時的な返済条件の変更を政府系金融機関、民間金融機関に指導してほしい」。また、過剰債務を抱え、施設の老朽化に悩む旅館業に対して、「金融債務カットのルールを作り、新規資金投入による旅館再生の途を開いてほしい」として新たな施策を求めた。
かんぽの宿の売却は 「宿泊以外の用途に」
旅館3団体は、亀井金融担当相が郵政改革担当相を兼務していることから、「かんぽの宿」の売却後の用途について、介護施設など宿泊施設以外とするように要望した。宿泊市場の縮小などを背景に、民間宿泊業者を圧迫することがないよう配慮を求めた。
旅行促進税制にも理解求める
旅館3団体は、亀井金融・郵政改革担当相に対し、国内宿泊旅行費用の所得税控除制度の創設についても要望した。国内宿泊旅行税制は国土交通分野の案件だが、政府を挙げた重要施策として、旅行需要喚起の必要性に理解を求めた。
旅館3団体が求める税制は、国内宿泊旅行費用について、年間1人当たり5万円を限度とした所得税控除制度。地域経済の活性化などにつながる「速効性のある内需拡大策」と強調した。
亀井金融担当相(中央)と握手をする(左から)佐藤信、佐藤義、武田、近兼の各氏