日本政策金融公庫は12日、旅館・ホテルなど生活衛生関係営業を対象に四半期ごとに行っている景気動向等調査の、今年6月調査分の結果を公表した。それによると、今年4〜6月期のホテル・旅館の売上、採算、業況の各DIは前期比ですべて上昇した。全業種計もすべて上昇した。ただ、前年同期を大幅に下回っており、同公庫では「景気後退による消費マインドの低迷が経営に深刻な影響を及ぼしており、生活衛生関係営業の景況は厳しさが続いている」としている。
調査は6月上旬、ホテル・旅館業ほか、飲食業、理容業、クリーニング業など生活衛生関係営業3220企業に個別訪問面接方式で行った。このうちホテル・旅館は208企業に聞いた。
前年同期比で売上が増加したとする企業割合から、減少したとする企業割合を引いた売上DIは、ホテル・旅館がマイナス50.2。前期(今年1〜3月期)のマイナス56.0から5.8ポイント上昇したが、前年同期(昨年4〜6月期)のマイナス28.4からは21.8ポイントの下落となった。
全業種の売上DIはマイナス46.2で、前期比6.6ポイント上昇、前年同期比11.8ポイント下降。
当該期が黒字の企業割合から赤字の企業割合を引いた採算DIは、ホテル・旅館がマイナス41.8で、前期のマイナス42.0から0.2ポイント上昇とほぼ横ばい。ただ、前年同期のマイナス20.5に対しては21.3ポイントの下落となった。
全業種の採算DIはマイナス18.0で、前期比9.4ポイント上昇、前年同月比6.2ポイント下落。
前期比で業況が好転したとする企業割合から悪化したとする企業割合を引いた業況DIは、ホテル・旅館がマイナス55.3。前期のマイナス65.8から10.5ポイント上回ったが、前年同期のマイナス23.7からは31.6ポイントの大幅な下落となった。
全業種の業況DIはマイナス42.5で、前期比19.2ポイントの大幅な上昇。ただ、前年同期比では9.5ポイントの下落となっている。
ホテル・旅館で特徴的な業況判断理由は次の通り。
今期・好転(高知県)=新型インフルエンザの影響を心配していたがそれほどでもなかった。むしろ高速道路の千円効果が大きかった。客足を伸ばすことができた。観光業界は大歓迎である。利用客は増大したが客単価は低下傾向にあり、その対応が課題である。
今期・悪化(山形県)=景気が悪化している中、山形市全体での客数が減少しているにもかかわらず、中央資本のホテルが乱立し、客単価の値下げ競争(特にネット利用)により、地元資本のホテル経営は悪化の一途をたどっている。
来期見通し・好転(岩手県)=昨年は、宮城、岩手内陸地震に見舞われ大きな影響を受け、県内の各地で大幅な売上の減少となり、経営の根幹を大きく揺すぶられた1年であった。今年度になってからは徐々に客足の回復も見られており、これからは各種のイベント、祭り、全国的会議開催の会場等により一層の回復基調になる見込みである。高速道路の割引効果も大きく売上アップに寄与している。
来期見通し・悪化(宮崎県)=極端にお客さんが減少した。宿泊の予約が極めて少なく増加の兆しが見えない。先行き不安である。