新春 国内OTAトップ座談会 楽天 × じゃらん × 一休 × JTB

  • 2022年1月6日

宿とユーザーの利便性追求 観光DXで地域経済を活性化

 出口の見えない長いトンネルのようなコロナ禍。一筋の光明も差したと思えばすぐ消えてしまう。国内OTAは、この難局をどのように乗り越えるのか。顧客ロイヤリティを維持、拡大するテクノロジー、マーケット戦略は何か。国内OTA3社のトップとJTBのWeb販売部長に各社の現状と今後の方向性を聞いた。司会は本社企画推進部長江口英一。(11月29日・東京都中央区のロイヤルパークホテルで)

21年の業況を振り返って

 ――2021年は楽天トラベルにとってどんな年だったか。

 髙野 繰り返し緊急事態宣言が出たり、Go Toトラベルが止まったままだったりと、厳しい年だった。一方で、宿泊施設さまやさまざまな提携パートナーの皆さまにいろいろと助けていただいた1年でもあった。

 楽天はグループでビジネスをしている。新型コロナの感染拡大で楽天トラベルは厳しい状況になったわけだが、楽天市場を含む国内EC流通総額は過去2年平均で2桁成長と絶好調だった。楽天カードの発行枚数も2400万枚に到達した。楽天カードのカード取扱高シェアは21%で国内1位だ。年間約12兆円の決済に使われている。楽天銀行も1100万口座で、オンライン銀行では1位。旅行市場が回復してきたら、こういった楽天グループの顧客基盤を活用してトラベルの取り扱いも伸ばしていけると考えている。

 宿泊施設のサポートには引き続き注力している。20年から始めた取り組みなのだが、宿泊施設への入金サイクルを通常よりも1週間早めている。Go Toトラベルのキャンセル処理の手続きも、宿泊施設の負担が大きかったので、代行して一括処理を行った。

 また、コロナ禍の旅行促進に向けた取り組みとして、各宿泊施設から、実施をされているコロナ対策についての情報をいただき、それを全て楽天トラベルの各施設ページに掲載した。安心してご宿泊いただけるお宿であることを一般の方にお伝えしている。

 グループ全体としては、日本全体の新型コロナワクチン接種率を上げることを目標にワクチン接種の無償サポートを行った。楽天グループ単独で立ち上げた接種会場を東京、福岡、仙台に、神戸市や神戸大学などとの産学官連携による接種会場を神戸に開設し、全て無償で運営を支援した。楽天グループが運営に携わった接種会場では、延べ85万人の方が接種した。宿泊施設の方も数千人がご利用になった。日本のワクチン接種率が上がることで、社会や経済が回復してくれば、最終的には楽天グループのビジネスにもプラスになるという思いで、行った。

楽天グループ 執行役員 コマースカンパニー トラベル&モビリティ事業長 髙野芳行氏

 

 ――21年の一休はどうだったか。

 榊 旅行業界全体が厳しい環境だったと思うが、一休は好調だった。私たちは、「高級」というニッチな市場でビジネスをしている。19年、20年、21年と高級市場は着実に成長した。

一休 代取締役社長 榊淳氏

 

 ――高級旅館は最も3密が避けられる。家族とマイカーで宿に移動し、部屋食、客室露天風呂で完結できる。

 榊 「ステイホーム」が叫ばれたコロナ禍の中で、「高級な宿もステイホームの一つ」と捉えられたお客さまが非常に多かった。高級宿泊施設の販売が引き続き堅調だった。海外旅行に出かけられないため、そのニーズが国内の高級旅館、高級リゾートホテルなどに向かったという面もある。私たちが扱っているニッチマーケットに需要が流れ込んだ。楽天トラベルも高級宿泊施設はよく売れたのではないか。

 髙野 小規模な高級旅館は確かに好調だった。

 榊 ただ、大都市圏のホテルは苦戦した。一番好調だったのは、箱根や有馬など都心近郊の宿。年間を通じて人気が高い。沖縄などの地方のリゾート地も良かった。海外旅行ニーズの国内シフトの好例だ。

 一休は客室単価が2万円以下の宿も販売しているのだが、実はそのクラスの予約も落ちなかった。一休は、旅行好きな優良顧客に支えられている。この方々がカジュアルな宿に泊まるシーンが減っていないというのは驚きだった。

 ――売れ筋の価格帯は。

 榊 仮に客室単価を4万、6万、8万と区切ってみても、各価格帯での予約数はほぼ同じレベル。私はヤフートラベルも担当しているが、ヤフートラベルから入る予約は2万円以下が圧倒的に多い。おそらく、楽天トラベルも同様の傾向ではないか。一休は全く異なる構成になっている。

 

 ――21年のJTBのウェブ販売事業はどうだったか。

 盛崎 マーケットの認識は皆さんと同様で、1月より低迷が続き、10月の緊急事態宣言解除後から回復基調に転じた。

 21年は、JTBがお客さまに対して提供する新たな価値、そして市場において競争戦略を明確化する1年となった。JTBはリアルエージェントならではのサービス、コンテンツを持っている。それらをフル活用して、OTAとは異なるユニークな価値をオンライン上で提供し続ける必要があると改めて実感した。

JTB 執行役員 Web販売部長

 

 ――具体的には。

 盛崎 現在準備中のものも含め6点ある。

 1点目はダイナミックパッケージの拡充。新たな基幹システムを稼働させ、特急を含むJR券、LCCを含む航空券、テーマパークなどの着地コンテンツと宿泊の組み合わせ予約を可能にした。

 2点目はパンフレットコンテンツの積極的なウェブ掲載。紙パンフはオフラインでお客さまとの重要な接点になっており、リッチコンテンツも多い。これをホームページと連携させることで、相互の媒体価値を高めていく。また、店舗のお客さまから寄せられた宿泊先でのエピソードも順次公開していく。

 3点目はリモート・コンシェルジュの拡充。コロナ禍における非接触ニーズにより、自宅から店舗スタッフへのオンライン相談が増加している。また、北海道、長野、京都では、オンライン専門店として現地店舗スタッフによる相談を開始した。今後は対象エリアの拡充に加え、高級施設や、家族旅行の相談など、目的に応じて専門店を拡充していく。

 4点目はJTBアプリの強化。国内ツアーの申し込みから出発までのオペレーションをカバーできるようにした。店舗利用のお客さまに対しても、日程表や手配状況など、アプリを通じて共有・確認できる機能を備えた。アプリの機能強化は現在も進めており、お客さまのご意見を取り入れながら今後も拡充を図りたい。

 5点目はウェブと店舗で分かれていたキャンペーンクーポンのオン(ライン)・オフ(ライン)統合。店舗でもオンライン発行の割引クーポンを利用できるようにした。これにより、来店誘導、オンライン誘導の施策が同時に実施できるようになった。

 6点目は地域コンテンツの発信。JTBには全国「47DMC」拠点があり、地域との観光素材開発などを行っている。その観光素材等をJTBホームページに掲載する機能の開発に着手した。

 

 ――21年のじゃらんnetはどうだったか。

 宮本 ご多分に漏れず、新型コロナの感染拡大状況に需要が大きく左右された1年だった。「やれることはしっかりやっていきましょう」という姿勢で社内を意思統一して1年間を過ごした。旅行者や宿泊施設の皆さま、また観光業界、地域の方々のそれぞれに向けた取り組みを継続的に実施した。

 旅行者に対しては20年3月に開始した「じゃらんステージプログラム」の磨き上げを行った。利用額に応じてゴールド、シルバー、ブロンズ、レギュラーの会員ランクに分けるものだが、利用頻度に合わせてさまざまな特典をご用意させていただいた。お客さまのロイヤリティを高めるのに役立っている。

リクルート 旅行Division Division長

 

 ――ポイントも付与するのか。

 宮本 ポイントも付く。ステージによって付くポイントが変わる。そのステージの方しかお申し込みいただけない宿泊プランを設けるなどして、旅行の頻度を高める取り組みをしている。

 ――5月からNTTドコモのdポイントと提携した。

 宮本 リクルートポイント、Pontaポイント、dポイントの3種類からお選びいただけるようになった。

 宿泊施設さま向けには、レベニューマネジメント支援ツール「レベニューアシスタント」の大幅な機能強化を5月10日に行った。サイトコントローラーやPMSと連携して、宿泊施設が持っているデータとじゃらんnetが持っているデータを合わせて分析することで、需要予測をしながら最適な販売価格を提案するツールだ。

 ――コロナ禍の需要がひっ迫していない状況下でレベニューマネジメントは機能するのか。

 宮本 過去のデータと先々の予約データを総動員してAIが分析する。現在の日々のデータも今後の需要予測のための大切な蓄積になる。

 コロナ禍で非接触、DXのニーズが以前にも増して高まったので、クレジットカード・電子マネー・QRポイントも使えるお店の決済サービス「Airペイ」、待ちの不満を解決する受付管理アプリ「Airウェイト」、お客さまからの問い合わせにAIがチャット形式で自動回答する「トリップAIコンシェルジュ」などは宿泊施設さまに引き続き好評だった。

 

22年の展望と具体的取り組み

 ――22年の展望、取り組みについて教えてほしい。

 髙野 21年10月に緊急事態宣言が明けてから、急速に回復基調になってきてはいるが、ここ1年半を振り返ってみると、回復と感染拡大を繰り返しているので、全く油断はできない。あらゆる状況にフレキシブルに対応していきたい。全国の営業担当者を通じて宿泊施設さまからさまざまな情報をいただきながら、どうやって一緒にマーケットを創っていくか、必要なサポートをさせていただくかを考え、実行していきたい。

 ――楽天グループの強みはなんといっても楽天ポイントだ。

 髙野 楽天市場も楽天トラベルも楽天カードも全て同じ「楽天ポイント」を軸に動いている。一度ご利用いただいたお客さまは、楽天経済圏に長くとどまっていただいている。グループ内の他サービスとの連携を引き続き深め、旅行需要につなげていきたい。

 ――楽天トラベルのサイト全面リニューアルの計画が止まったままだ。

 髙野 インバウンド需要の回復状況を見極めている。新プラットフォームはグローバルなお客さまの利用を想定した設計だった。ところが現在は、ほとんどが国内のお客さま。今は確実に国内客を取ることを優先する。システムを運用している会社に共通することだが、プログラムもハードもネットワークも全ては必ず古くなる。フルリニューアルはどこかのタイミングで必ず行う。

 

 ――22年の一休の取り組みは。

 榊 「こころに贅沢(ぜいたく)させよう」が一休のそもそもの存在意義。真に心に贅沢をさせられる場所をお客さまに提供することを続けていく。大技は出せないが、小さな改善を今まで通り積み重ねていく。各ユーザーの検索意図を読み取って、そのユーザーに最適化した順番で検索結果を表示するなど、改善すべき点はいくらでもある。一休は、そこの最前線を歩んでいきたい。

 一休は、宿泊旅行に年間100万円使うユーザーに支えられている。100万円のユーザーは、検索回数も宿泊回数も多い。そのお客さまのことを最もよく知っているのは私たちだ。ご期待に沿う検索結果を表示したり、リコメンドメールを送ったりして、きめ細かい対応をしていく。

 一休は、1日に多いときだと500種類のメールを配信している。多種少量配信だ。少種大量配信で「セール始めました」というメールを100万人規模に送る企業は多いかもしれない。私たちはユーザーの行動履歴を分析して、その内容に関心がありそうな人だけを抽出して送っている。このやり方だと、同じ内容のメールを一斉送信する場合と比べて、開封率が100倍違う。

 ――分析はAIが行うのか。

 榊 プログラムで傾向などを判断する。データを長年蓄積して培ってきた技術だ。基本的には、パーソナライズした検索体験であり、パーソナライズしたユーザーコミュニケーション。それが最良のユーザーエクスペリエンスとなっている。この部分は、お客さまから高い評価をいただいている部分で、一休の強みだ。さらに強化していく。

 

 ――22年のJTBの取り組みは。

 盛崎 市場環境が、コロナ禍前に戻ることはないという認識で圧倒的な変革を進める。

 JTBの事業基盤は、発地における「送客ビジネス」と着地における「誘客ビジネス」。また、「法人営業」「個人営業」の掛け合わせにより、広義のツーリズム全体をカバーしている。

 各領域でお客さまや各事業パートナーの皆さまに提供できている価値を再定義し、それらをつなぎ合わせることで、お客さまとの関係性を深め、より高い実感価値を生み出していく。

 具体的には、OMO(Online Merges with Offline)を前提にサービスを進化させていく。

 旅マエから、 旅ナカ、旅アト、日常まで続くカスタマージャーニーに寄り添うため、スマートデバイス起点でのOMO、つまり、オンラインとオフラインを融合したシームレスな購買体験と、コミュニケーションを実現し、CX(カスタマー・エクスペリエンス)を向上し続ける。

 データを見てもJTBホームページを閲覧して、来店またはお電話を頂くお客さまが増えている。オンライン・オフラインをライフスタイルや状況に合わせて併用いただくお客さまは増えているので、仮説検証を繰り返しながら取り組みを加速させていく。

 ――JTBホームページとるるぶトラベルの2種類のサイトを運営している。旅行サイトが二つに分かれていた方が、メリットがあるのか。

 盛崎 間違いなくある。JTBホームページでは国内・海外ツアーを含め、旅行商材全般を販売している。一方で、るるぶトラベルは国内宿泊に特化している。

 「JTB」と「るるぶ」それぞれのブランドやサイトコンセプトに合ったお客さまにご利用いただいており、相互補完関係にある。JTBホームページは購入単価が非常に高く、るるぶトラベルの方がお客さまの平均年齢が若いなどの特徴が出ている。るるぶトラベルについては、アクティブなお客さまも多いので、現在実現できているスムーズな購買体験と合わせて、るるぶブランドコンテンツを活用したコンテンツ軸のOMOを実現させながらCXを高めていく。それぞれのサイトに特徴を持たせているが、IDを共通化していることで、お客さまのメリットや利便性を最大化できている。

 

 ――22年のじゃらんnetの取り組みは。

 宮本 基本的には、従来通り「総旅行回数の増加」に継続的にチャレンジして、コロナ禍で苦しんできた宿泊業界に貢献したい。

 先ほどお話しした「レベニューアシスタント」や「トリップAIコンシェルジュ」、またホームページを簡単に作成できる「ホームページダイレクトサービス」などの業務支援サービスは、さらに強化する。また、「Airレジ」「Airペイ」「Airシフト」をはじめとした業務・経営支援サービス「Airビジネスツールズ」も同様に積極展開する。宿泊需要は今後必ず回復する。宿泊施設がより高い生産性を上げられるように業務効率化のお手伝いをさせていただく。

 ――観光DXのための包括連携協定を21年11、12月に山梨県富士吉田市、新潟県妙高市と結んだ。

 宮本 各地域の観光DXモデルとなる「地域消費分析プラットフォーム」構築のための実証実験をそれぞれの市と行う。具体的には、「Airビジネスツールズ」のサービスの一つである「Airペイ」の導入で地域内事業者のキャッシュレス化の促進を中心としたデジタル消費基盤の構築を図る。次に、リクルートが保有する各種データを提供し、各エリア内の来場観光客数、宿泊、決済などのデータをできるだけ可視化し、消費促進のための打ち手につなげていくための基礎分析を行う。特定の地域に私たちが持っている各種データを提供するのは今回が初めてだ。

 じゃらんリサーチセンターで、日本全国の自治体のサポートをさせていただいており、地方部における「地域観光消費額増加」は重要な課題と捉えていた。これも繰り返しになるが、総旅行回数が増えれば、地域の交流人口が増える。それに備え、ご当地グルメや体験プログラム、特産品など、地域におけるタビナカ消費の選択肢を増やすことが大切だ。また、多様化する決済手段に対応することも、消費環境を整える意味で不可欠。旅行者の新たな旅行体験を実現していくために、この二つの観光DXプロジェクトは大変重要な役割を担っていると考えている。

プライベートの楽しみは

 ――最後に皆さんのプライベートについて伺いたい。

 髙野 一昨年から引き続きサウナにはまっている。年間150回くらい入る。出張先でも入る。最近は宿泊施設でサウナ設備に力を入れているところも多い。楽天トラベルは、サウナ付き宿泊施設の登録数が最も多いと自負している。

 盛崎 帝国ホテルなど高級施設でもサウナ付き客室が人気だと伺った。

 ――榊さんは。

 榊 21年5月に八ケ岳の山小屋を購入した。築30年の物件で、一番近い家から500メートルぐらい離れているポツンと一軒家。週の半分以上はそこでテレワークをしていた。近くに「増富の湯」という日帰りラジウム温泉があり、通い込んでいる。料理は庭で七輪を使って作るなどしている。

 ――盛崎さんは。

 盛崎 プライベートというよりJTBホームページのアピールになってしまうが、先ほども少し触れたようにJTBホームページではリッチコンテンツを集めて、こだわり検索に対応している。「わんちゃん2頭と同室に泊まれる宿」や「都市型高級ホテルやリゾートホテルでのワーケーション」、自分としては最も非日常を感じる「ホテルの朝食」が高評価の宿などを巡っている。旅はストーリーが大切であり、その空間で誰とどんな時間を過ごすかを今後も探求していきたい。

 ――宮本さんはどうですか。

 宮本 新しく釣りを始めた。密を避けられるレジャーとして友人と出かけている。

 ――榊さんの別荘に対抗してクルーザーを購入されたんですね。

 宮本 そんなわけない(笑)。千葉など主に東京湾周辺で磯釣りを楽しんでいる。ゴルフも今まで通りやっている。

 

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