ホスピタリティからSDGsへの道
新年明けましておめでとうございます。
さて、2年にわたる重苦しいコロナ自粛のおかげで観光立国の核心であるホスピタリティについて深く考える機会を得ることができました。
ホスピタリティとは、人と人だけでなく、広義には、人ともの、人と社会、人と自然などとの関わりにおいて具現化されるものであり、定義に立ち戻れば対象に対して良くなるように働きかけることで自らと対象の間に共創関係が生まれてよりよい価値が新たに生まれる、あるいは再生するということだそうです(日本ホスピタリティ推進協会ホームページ「ホスピタリティとは」より引用)。
そこで以下にホスピタリティが発揮される場面を分類してみます。
1.人ともの
好きで良いものを厳選して長く使う時代がありました。作家の愛した万年筆、親父が身につけていた金時計、おばあちゃんの着物などです。また、農林漁業、製造業でものづくりの過程を知ることにより、ものへの感謝が生まれます。人ともののホスピタリティが発揮されれば、良いものに感謝をして大事に使うことになり、作る側のモチベーションが上がって良品製造・購入の良循環が再生します。インスタ映え商品乱造と使い捨ての悪循環から脱却する潮時です。
2.人と社会
ゼロサムの世界ではなく、ライバルとも情報を共有して共創関係を作り新しい価値を生み出す、全米一住みたい町のオレゴン州ポートランドの社会システムは理想的です。
また、日本の2千年の風土が形づくった宝物が全国にホコリを被っています。これを発掘して磨き上げれば立派な地方の光となって、地元住民に誇りを与え帰属意識が強くなり地方創生につながります。人と社会のホスピタリティが実現すれば共創関係が生まれてより良い社会環境を実現できます。
3.人と自然
植えるだけで利用しないために荒れてしまった森の木を間伐して使い始めることで、健全な生態系を取り戻すきっかけとなり循環再生型経済が復活します。
また、兵庫県豊岡市では絶滅したコウノトリの再生プロジェクトを実行して見事成功しました。コウノトリは人間以外で生態系の頂点に立つ動物で、再生したことで下位の生物が皆存在する生態系が戻りました。人と自然のホスピタリティが実現すれば、生態系の健全化が図れて人類にとってより住みやすい自然環境を実現できます。
ホスピタリティを発揮する行為は利他の精神によるものであり、世界が目指しているSDGsの本質でもあると思います。
また「観光」とは既存の観光資源を観に来てもらうことだけでなくホスピタリティで新しい国の光を生みだすことだと気づきました。
薄明かりの中に輝きの兆しを感じる新春であります。
鈴木会長