全国の宿泊施設における昨年12月の延べ宿泊者数は、コロナ禍の影響を受け、前年同月比37.9%減の2925万人泊となった。観光庁が1月29日に発表した宿泊旅行統計調査の第1次速報値。前年同月比の減少率は、改善が続いていたが、感染の再拡大に伴い再び悪化した。今年に入って1月7日には緊急事態宣言が発令され、1月の実績悪化は確実で、宿泊市場は春に続く「二番底」に直面している。
延べ宿泊者数の前年同月比は、緊急事態宣言の発令で4月に80.9%減、5月に84.9%減に落ち込んだが、Go Toトラベル事業、自治体の旅行・宿泊支援事業などで回復傾向。夏に感染の「第2波」で足踏みしたが、11月には30.5%減にまで改善した。しかし、「第3波」とされる感染再拡大で12月には下げ幅が再び拡大した。
感染再拡大でGo Toトラベル事業が12月28日から全国で一斉停止となったほか、感染状況に応じて札幌市、大阪市、東京都、名古屋市、広島市の5都市では年末に先行して事業を停止しており、12月の宿泊需要の減少に大きく影響したとみられる。
12月の延べ宿泊者数の内訳は、日本人延べ宿泊者数が前年同月比24.4%減の2869万人泊、外国人延べ宿泊者数が同93.9%減の56万人泊だった。日本人延べ宿泊者数の前年同月比は、10月に19.2%減、11月に16.1%減に縮小したが、12月には再び悪化した。
12月の宿泊施設の客室稼働率(第1次速報値)は、前年同月比20.2ポイント減の38.5%だった。客室稼働率は5月に底を打ち、上昇傾向にあったが、11月の46.2%から下降に転じた。
12月の施設のタイプ別の客室稼働率(カッコ内は前年同月比)は、ビジネスホテル48.1%(23.5ポイント減)▽シティホテル38.5%(37.5ポイント減)▽リゾートホテル36.8%(15.8ポイント減)▽旅館28.5%(6.5ポイント減)▽簡易宿所12.8%(17.6ポイント減)。
21年1月の調査結果は、2月末に第1次速報値が発表される予定だが、宿泊需要の落ち込みは避けられない情勢だ。緊急事態宣言の発令で不要不急の外出、移動の自粛が要請されたほか、対象地域の内外で旅館・ホテルの臨時休業などが相次いだ。春の緊急事態宣言の発令時には、4月、5月の延べ宿泊者数の前年同月比がそれぞれ80%を超えるマイナスだった。