【VOICE】大学院で観光経営を学ぶ意義 立命館大学大学院経営管理研究科 観光マネジメント専攻 専攻長・教授 石﨑祥之氏


立命館大学大学院経営管理研究科 観光マネジメント専攻 専攻長・教授 石﨑祥之氏

未来を描く基礎学力を身に付ける

 本学経営管理研究科に4月に観光マネジメント専攻(MBA)を開講して、春学期が終了した。開講当初にありがちなバタバタもあったが、広く観光業界の社会人の院生に参加してもらい、さまざまな試みを日々実行してゆくという刺激的な毎日であった。

 例えば、私の担当した「旅館経営」では、旅館業界の若手ホープと目されている方に特別ゲストとして参加してもらった。

 若手ながらすでに豊かな経験を持ち、メディア等で繰り返し取り上げられるなど、見識も十分な方に果たして当方として提供できるものがあるのだろうかと危惧しながらであったが、講義を終えて感想を聞いてみたところ、「目先の損得ではなく、『旅館』の本質とは何かということを改めて考えなおす機会になった。結局のところ、自分はその答えを探しているのだと思う」という大変示唆に富む言葉をいただいた。まさにここに大学院で観光を学んでもらう意義が現れていると思う。

 実は昨年度すでに事前準備として同じく「旅館経営」科目を既設のMBAコース院生に対して開講したのだが、ここでも旅行雑誌の編集長経験のある方が故郷の自宅を改造してゲストハウスを開業してみたいという刺激的なプロジェクトを提案され、この案に対して製造業の中小企業の女性経営者や、いずれ本国で観光事業を展開したいと考える留学生などから突っ込んだ質問や意見が飛び交い、活気のある講義となった。

 一方通行となりがちな大人数での学部講義とは異なり、大学院、とりわけMBAコースでは社会人経験、業界経験を持つ受講生同士のディスカッションを通じた「学びあい」が重要な意味を持つ。

 さらにその基盤を作るためのマーケティングやファイナンス等の基礎科目があり、これらを受講することで感覚ではなく、数字やロジックで経営を行う力を養うことができる。

 今、観光・宿泊業界はコロナ後のリベンジ需要とインバウンドの相乗効果で活況を呈していると聞く。そこに折からの人手不足が重なり、のんびり勉強などしている暇などないという経営者も多いだろう。

 しかし、コロナ禍に代表されるような「突発事態」が再発しない保証はどこにもない。その意味で「一寸先は闇」なのである。だからこそ、目先にとらわれることなく、視点をすこし先の未来に置いた「鳥瞰図」を描くこととそのための基礎学力を今から身に付けておいてほしいと思う。そして同じ目的を持った人と切磋琢磨しあうという大学院での学びに挑戦してみてはいかがだろうか。


立命館大学大学院経営管理研究科 観光マネジメント専攻 専攻長・教授 石﨑祥之氏

 
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