大地事業協同組合 事務局長 岩本真明氏に聞く

  • 2022年9月29日

岩本事務局長

技能実習の実態と可能性

確かな支援で安心の実習 長期的な人材育成可能に

 近年注目されている外国人材。さまざまな在留資格がある中で今年に入って話題となっているのが技能実習だ。一部から「現代の奴隷制度」などとやゆされる同制度だが、その実態は―。受け入れ監理団体として、10年以上実習実施企業や技能実習生を支えてきた大地事業協同組合(理事長=細田喜代司・みくりや青果社長)。同組合の取り組み、技能実習制度の宿泊業での可能性について岩本真明事務局長に話を聞いた。

 ――大地事業協同組合の概要を伺いたい。

 「青果仲卸として全国最大規模の取引量を誇り、大手量販店や大手外食を中心とした販売チャネルを持つ『みくりやグループ』を後ろ盾とした、外国人技能実習生の一般監理団体だ。広く農家とお付き合いをする中で、農家の人助け、人づくりに貢献しようと2009年に設立した。『人づくりに貢献し、人類、社会の発展に貢献する』を理念に事業を行っている。当組合がお世話している実習実施企業は、当初農家が多かったが、現在では農業3割、建築業3割、残りは総菜工場などの工場だ。宿泊業についてはコロナ禍でストップしていたが、ようやく今秋から実習生の面接などを実施する計画だ」

 ――受け入れている実習生の人数や出身国は。

 「設立以来延べ数百人の実習生を受け入れてきたが、コロナ禍の影響で実習中の実習生は少なく、北海道から九州まで150人ほどだ。実習生の入国が再開した3月以降、5月末までで入国を待っていた35人ほどが来日した。年内にさらに20人ほど入国予定だ」

 「元々は中国人が多かったが、現在はベトナム人が中心だ。コロナ禍直前にミャンマーからの受け入れ準備を進めていたが、コロナ禍に加え軍事政権による政情不安もあり中断している。現在は新たに、インドネシア・バリ島からの受け入れに取り組んでおり、7月に6人が採用された」

 ――技能実習制度の概要と実習生の動向は。

 「17年に施行された外国人技能実習法に基づき、技術の習得状況に合わせて1号、2号、3号と進んでいく。実習期間は1号が1年、2号が2年、3号が2年で、最長5年在留できる。しかし第3号技能実習を行えるのは外国人技能実習機構に『優良』と認められた監理団体、実習実施企業のみ。加えて宿泊など9職種・作業は、現在3号への移行を認められていない。ただし、宿泊業の場合は、無試験で特定技能1号に在留資格を移行できる」

 「昨年来、新制度下で3号の実習修了者が出ているが、2号から3号に移行する人はひと握り。半数以上は2号まで、3年間の実習が終わると他の企業に転職している」

 ――転職の理由は。

 「実習生にヒアリングすると『いろいろなところで働き、経験を積みたい』と言う。『都会に行きたい』という若い人も多い。監理団体も実習実施企業も、人材育成という観点から、実習生には3号を修了して帰国してほしいし、実習後も特定技能に移行して働き続けてほしいのだが、現状では難しい。工場などでの単純労働の場合、モチベーションを保ちにくい面もある」

 ――外国人技能実習制度の見直しの話も出てきているが、どう捉えているか。

 「私たちの監理している事業者は皆賃金も高く、実習生が新型コロナ感染症になったら自分で病院に連れていくような大変親身なところばかりだ。なので、報道等で問題視された、低賃金、暴行、妊娠時の強制帰国などが実際に行われていることに大変衝撃を受けた。こういった問題を防ぎ、安心して充実した実習を受けてもらうためにも監理団体の役割が重要になってくる。当組合では実習生のサポートを第一に考え、ベトナム人職員3人が常駐していつでも相談などできるようにしている上、ベトナムの学校の駐在員を大阪に置いて、24時間体制で二重のサポートをしている。事業者にもこまめに足を運び、実習状況の聞き取りを行っている。実習企業に対しては、最低賃金で受け入れないことや保険加入などをお願いしている」

 「送り出しについても、ブローカーによる高額な手数料などが実習生の借金につながり、実習中の失踪などの要因になるとして問題視されている。当組合では実習生本人に聞き取りなどを行い、法外な費用負担を強いるような送り出し機関とは取引していない」

 ――宿泊業で技能実習生を受け入れるメリットは。

 「特定技能と違い転職不可であることが問題視されているが、転職可能な環境で技能の習得に至らないまま転職してしまう事例を多く目にしてきた。転職や解雇などの不安なく、3年間という長期的視点で実習を行えるのは、企業側、実習生側双方にとって大きなメリットだ。特に宿泊業の接客・衛生管理作業は、工場などでの単純労働とは違って日々変化と成長のある職種であり、長期の実習でも実習生がモチベーションを維持しやすい。企業にとっては将来的な特定技能での人材確保にもつながる」

 「15年から技能実習が始まった総菜加工などは、今では大半を外国人が担っている。今後宿泊業も外国人材がどんどん浸透していくだろう。若くて真面目で意欲があり、可能性に満ちた外国人実習生は職場を活性化する。ぜひ多くの実習の場を提供してほしい」

 


いわもと・まさあき=大阪府出身。立命館大卒業後、メーカー勤務を経て、2018年大地事業協同組合入職。同年から現職。39歳。

【聞き手・小林茉莉】

 

 
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