観光庁は、観光分野のDX推進に向けて、事業者間、地域間のデータ連携を通じた観光・地域経済活性化実証事業を実施している。2023年度には、宿泊、交通、飲食、体験アクティビティなどのデータを地域一体で収集・分析し、旅行者の利便性向上や観光地経営の高度化につなげる地域一体となったDXの取り組み7事業が行われた。6日には実証事業の成果報告会が東京都内で開催された。地域からはオーバーツーリズムの防止や消費拡大などにつながる成果が報告された。
23年度に実証事業を実施したのは、箱根温泉DX推進コンソーシアム(神奈川県)▽海の京都観光DX推進協議会(京都府)▽隠岐OTA推進共同事業体(島根県)▽しまなみ海道DXコンソーシアム(広島県、愛媛県)▽福井県観光DX推進マーケティングデータコンソーシアム▽山形オープントラベルコンソーシアム(山形県)▽日本観光振興デジタルプラットフォーム推進コンソーシアム。このうち、3地域での主な取り組みを成果報告を基に紹介する。
箱根 デジタル地図に混雑表示で分散化
神奈川県箱根町では、旅行者に周遊を促す情報提供の不足、交通渋滞の慢性化が課題となっている。箱根DMO(箱根町観光協会)は、日立システムズ、ランドブレインなどの事業者と連携し、デジタルマップを構築し、旅行者の行動変容につなげる実証事業を行った。オーバーツーリズムの防止と消費拡大の両立を目指す。
箱根DMOの佐藤守専務理事は「取り組みの方向性は三つ。一つ目は課題に向き合う、二つ目は世界的なフォーマットや仕組みを取り入れる、三つ目はデータをオープン化して関係者と一緒に取り組む。これらをポイントにした」と説明した。
地域の課題を踏まえて構築した「箱根観光デジタルマップ」は、関係機関や事業者からデータを収集、統合することで、交通機関の運行情報、交通渋滞、駐車場の満車・空車、タクシー待ちなどの情報を地図上に可視化し、観光施設や飲食店の情報と共に最適な周遊ルートを提案できる。観光施設などは混雑状況に応じたデジタルクーポンの表示も可能。
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