観光産業全般の品質向上と訪日外国人旅行者の拡大を目的に「観光品質基準」の研究を進めている中部圏社会経済研究所(旧中部産業・地域活性化センター)はこのほど、研究成果を取りまとめた報告書を刊行した。同基準は旅館の評価、ランク付けする際のツールとなるもので、報告書は外客誘致を視野に入れた旅館の数値評価の必要性を提言している。
同研究所は2008年から、外客が安心して宿泊施設を選択でき、満足度を高めてもらうための仕組み「観光品質認証制度」と、この制度を運用する上でのベースとなる観光品質基準のあり方について、調査研究を進めている。
10年に「観光品質基準(日本旅館編)の策定」という調査研究報告書をとりまとめており、今回その続編となる「訪日外国人旅行者向け『観光品質基準』に関する調査研究報告書」を刊行した。
同基準は「観光関連の施設やサービスの品質を客観的に判断、評価するためのチェック項目集」(荒井浩生・産業振興部長)という位置づけ。荒井部長はまた、「日本にはこうした品質基準に基づく宿泊施設の評価、ランク付けや品質認証システムはないが、観光立国を推進する上で、評価、ランク付けは避けては通れないのではないか」と指摘する。
昨年、新潟、群馬、長野の3県にまたがる広域観光圏「雪国観光圏」がこの基準を使用して、圏域内の宿泊施設の評価事業を実施した。
事業には旅館・ホテル、民宿など50軒が協力。ニュージーランドの実例を参考に、外観や客室のハード面から、接遇や食事のソフト面まで300を超える項目で評価し、旅館34軒を1〜5つの星印で表した。
評価された旅館の反応はさまざまで、「旅館の良いところ、悪いところを的確に評価できており、納得できる結果」「自分たちの認識と調査結果がかなり乖かい離りしており、納得できない」との声があった。しかし、基準そのものについては「評価する物差しとして必要」「外国人が旅館を選ぶ目安となる」と概ね評価している。
ホテルと異なり、旅館特有のおもてなしをどう指標化するのかなどの問題もあり、旅館業界は数値評価に対して厳しい目を向ける。しかし、雪国観光圏のようなケースもあるだけに、旅館の評価、ランク付けに対し、検討してみる価値はありそうだ。