旅行需要喚起策「Go Toトラベル」の対象に東京を加える方針が表明され、国内旅行需要の押し上げ効果に期待が膨らむ。Go Toトラベルでは国内旅行需要喚起と感染防止対策の両立が課題で、参加事業者には新型コロナウィルス感染防止対策の実施が義務付けられている。消費者の意識が劇的に変化したウィズコロナの環境下では、「安全・安心」への取り組みに対する不断の努力が重要であることは周知のことだが、大事なことは「安全・安心」を一括りに捉えるのではなく、「安全」と「安心」のバランスをどのようにとっていくか、ということである。
安全とは、絶対基準(科学的な根拠に基づく感染防止のガイドライン)であり、厳守しなければならないものである。当然、コストも発生する。
一方、安心は個々人の主観や感覚に大きく依存するものなので際限がない。この際限がない安心をどのように提供していくか、それによって発生するコストをどう処理するかが今後の大きな課題である。
例えば、「露天風呂付き客室」への宿泊が増えているのは、まさにお客さまが安心を求めた結果である。また、非接触でのダイレクトチェックイン・チェックアウト、定員マイナス利用、部屋食などさまざまな工夫が考えられる。問題は、これらによって発生するコストをどのように吸収していくか、その処理の仕方によっては競争力に大きな差が出てくることは言うまでもないことである。
このたびのコロナ禍でお客さまの意識の中に「価格」よりも「安全・安心」を優先する流れができつつある。こうしたことを背景に、お客さまに対して安全・安心のサービス内容をしっかり目に見える形で説明をし、そのコストを価格に反映する努力を最大限に行うべきである。それによって単価アップにもつなげていきたい。
また、ウィズコロナの時代においては、既存のサービスの有様を変えるだけではなく、ニューノーマルに対応した新たな需要の創出にも知恵を絞る必要がある。
例えば、最近働き方改革や地方創生を推進する政府の後押しもあり、リゾート地などでワーケーションができる制度や仕組みが整備されたり、通信環境やセキュリティが整ったサテライトオフィスを活用する企業が増加している。
そうした動きを捉えて、宴会場をコワークスペースに改装したり、コネクティング客室の一部屋をワークスペースに変えたり、遊休スペースを活用してシェアオフィスにするなど、ワーケーションやブレジャーへの対応を始めた施設も出始めている。こうした新しい動きは、長年の課題であった単価アップ、連泊(ロングステイ)、オフ期対策などにもつながる効果として大いに期待される。
変化に柔軟に対応し、新しい世界を切り開いていきましょう。
髙橋氏