【VOICE】Go To キャンペーン 國學院大學観光まちづくり学部 教授 塩谷英生氏

  • 2022年5月11日

塩谷英生氏

観光市場回復施策は自治体首長協力のもと取り組みを

 新学部に赴任する前に国内観光地を少し巡ってきましたが、改めて旅行市場が厳しい局面にあることを実感しました。九州のある門前町では人気店に並ばずに入れましたが、食事のオーダー前にまん延防止の名目で携帯番号などを記入させられました。会議場に隣接するシティホテルでは、メイン・ダイニング以外のレストランはクローズされ、近接するコンビニも閑散としていました。照明も心なしか暗めですし、このような状況では清掃や施設メンテナンスの費用も抑えざるを得ません。国内最初のコロナ感染者が確認されてから2年余り、新たな変異株もあって陽性者数の波動は当面続きそうですが、この間に観光地の疲弊が一層進むことを懸念しています。

 コロナ禍以前の観光産業がわが国経済のけん引役の一つであったことは間違いのないところです。コロナ前の2019年のわが国の観光消費額は29.2兆円で、その5年前である14年の22.5兆円から6.7兆円も増加していました。観光産業の売り上げ増加は原材料調達先を潤し、従業員の家計を潤すことで総合的な波及効果を生みます。19年の観光消費による付加価値ベースの波及効果は28.4兆円で、これはGDP(国内総生産)の5.1%に相当していました。

 翻って、21年の観光消費額は国内旅行消費額と訪日外国人消費額の速報値ベースで10.1兆円です。これに、訪日客の本邦航空会社への旅客運賃や日本人海外旅行の国内分支出、国内旅行での別荘利用の費用(帰属計算)を加算しても10.5兆円程度が観光消費額の総額かと思われます。19年の比を用いると付加価値効果は10.2兆円程度であり、失われたGDPは21年だけで18.2兆円に上ります。実際にはこれに観光関連の設備投資減少の影響も加味しなければなりません。わが国の21年(暦年名目値)のGDPは541.9兆円で、19年の558.5兆円から16.6兆円減少しています。観光産業の側でも地元向けのビジネスに重心を移したり、国のコロナ対策事業へ参入するといった形で代替する付加価値を生み出す努力を重ねていますが、わが国のGDPの低迷を止めるための一つの条件が、観光市場の回復であると考えます。

 日本人の約半数は19年でも年間宿泊観光旅行がゼロ回でしたから、Go Toキャンペーンであれワクワク割であれ多数決では反対派の数が多いのは当たり前とも言えます。こうした施策については観光産業を保全し、周辺産業にも波及する地域経済対策でもあると位置付けた上で、自治体の首長の協力の下で取り組んでいただければと願っています。

塩谷英生氏

     
 
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