
中之条町観光協会 会長 田村亮一氏
経済効果大、新風吹き込む
群馬県の北西部、新潟県、長野県と接する山あいに中之条町は位置します。「花と湯の町」をキャッチフレーズとし、「花」は中之条ガーデンズの美麗な花々、また、ラムサール条約登録地である芳ケ平湿地群や野反湖などの雄大な自然を、「湯」は私の出身地であり、上州三名湯にも数えられる四万温泉とともに草津の仕上げ湯として古来より有名な沢渡温泉、そして花敷、尻焼など多様な温泉を有する六合温泉郷などを表しています。
そのほか「文化」や「芸術」の面では国重要無形文化財の白久保のお茶講や鳥追い祭、さらに、今年も9月9日~10月9日に開催され9回目を迎える「中之条ビエンナーレ」なども町の特色の一つと言えます。
ビエンナーレは隔年に開催される現代美術の祭典で、町全体を美術館に見立てて開催されています。里山や温泉といった地域そのものが芸術鑑賞の会場となります。普段、統計による町への来訪者は首都圏のシニア層が多いのですが、ビエンナーレ期間中はインバウンドを含めて若いお客さまの割合も増加するなど、入込客数換算では30万~40万人の来訪者を数える盛況ぶりで、この経済効果は多大で四万温泉に宿泊される年間のお客さま30万人弱と比較しても驚異的な数字と言えるものです。
毎年開催してほしいという要望も内外から聞こえてきますが、”隔年に1カ月だけ”という特別性が価値を高めている一因であることも忘れてはならないと思います。また、ビエンナーレの魅力は地域にとっても作家との交流という点で大きな財産になっています。海外アーティストも含めて町内における長期の創作活動を通じ、この土地の持つ独特の風土・文化から着想を得て、中之条でしか作り得ない作品を手掛けます。
ある作家は「作品は中之条という土地と、私という人間の子どもである」とも言っています。実際にビエンナーレが縁で、移住定住をする作家も多くいらっしゃいます。町内の園児や学生も教育の一環として、ビエンナーレを見学し、時には作家とともに制作活動に関わります。現代美術は敷居が高いと感じる方もおられますが中之条の子どもたちにとっては、身近な存在となっています。
課題も地域における2次交通や集客面での平日と週末との格差の解消などが挙げられますが、地域一丸となって取り組む「中之条ビエンナーレ」は中之条に新しい風を送り続けています。そして、私たち旅館業者にとっても大変ありがたい祭典であり、町民にとっても大切な宝物となっています。
中之条町観光協会 会長 田村亮一氏