【VOICE】住民との交流が観光資源に 一般社団法人そらの郷(徳島県三好市)事務局次長  出尾宏二氏


一般社団法人そらの郷(徳島県三好市)事務局次長  出尾宏二氏

「にし阿波」の観光~千年のかくれんぼ~

 東洋文化研究者であるアレックス・カー氏の言葉を借りれば、Iya valleyや剣山の麓に広がる秘境と呼ばれるこの地域の価値は「何もないが、ある」ことである。それは「ラグジュアリーなレジャー要素は少ないが、地方独自の価値ある体験がある」ということなのだろう。

 「そらの郷」は、徳島県西部の四つの自治体で構成する地域連携DMOとして、来訪者目線で顧客価値を創造するために、宿泊や飲食、自然体験を中心としたアクティビティ事業者はもちろん、地域の住民の方々も巻き込んで官民連携で「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを展開している。吉野川や剣山など恵まれた多自然な環境の中の集落というローカルコミュニティに来訪者を迎え入れ、心温まる交流の場と時間を提供し、「千年のかくれんぼ」の世界観を味わってもらえる体験を開発してきた。

 地域住民にとっても来訪者との上質な交流を通じて、単に観光消費者とサービス提供者という関係だけでなく、来訪者が心の通う関係人口として地域の持続可能性を高める消費をしていただくサポーターのような関係であってほしいと願っている。地域の最大の課題は担い手不足であり、観光は人口減少や少子高齢化した地方の生き残りをかけた課題解決の一つでもある。自然景観や温泉での滞在という過ごし方の提供に加え、独自な食材やガストロノミー、文化伝統の探求や維持などをテーマにしたアドベンチャーとしてのコンテンツ開発など、「住み続けられる地域」を実現する観光振興に挑戦している。

 そのためにも観光圏の枠組みや、2017年に認定された「世界農業遺産」の農業文化や農産品など、これまで「教育旅行」の「暮らしの体験」として培ってきた住民が主体となって提供する体験プログラムを、今後、インバウンドはもちろん企業研修など、より地域との関係性の深い来訪者の拡大に向けてプロモーションや営業に取り組みたい。

 観光産業は、経済波及をもたらせるばかりか、交流観光が地域住民を笑顔にさせ、幸せに暮らしていける地域づくりの大きな力になると考え、住民主体の観光も今後さらに拡大させていきたいと考えている。何よりそれが地域の目指すサスティナブルな観光であり、地域の観光のかじ取り役としてのDMOミッションは(1)地域住民の笑顔で住み続けられる地域の創造(2)地域の観光収入の拡大と経済波及―という目標を掲げ、数的拡大から質的拡大にかじを切ろうと考えている。

 
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