【2019年 焦点】インバウンド 観光経済新聞 記者 森田淳


外国人も安心して滞在できる環境を

 2018年上半期(1~6月)の訪日外国人旅行者数は前年同期比15.6%増の1589万9千人を記録。20市場全てが過去最高になるなど、順調に推移した。6月単月も前年同月比15.3%増と大きく伸びた(日本政府観光局発表)。

 しかし7月は伸び率が5.6%増と鈍化した。大阪府北部地震や西日本豪雨の影響で、韓国からの旅行者数が5.6%、香港からの旅行者数が3.3%、それぞれ減少したことが響いた。8月も韓国からの旅行者数が4.3%減少し、全体で4.1%増と低い伸びにとどまった。

 そして9月。前年同月比5.3%減と、2013年1月以来、5年8カ月ぶりに減少に転じた。台風21号による関西国際空港の閉鎖、北海道胆振東部地震の影響で、韓国、中国、台湾、香港の東アジア4市場が軒並みダウンした。

 外的要因に左右されるインバウンドの脆弱(ぜいじゃく)さを改めて示した格好だ。ただ、10月は1.8%増と、低い伸び率ながら2カ月ぶりに増加した。このままのペースで進めば年間の外国人旅行者数は3148万人。11月、12月が前年と同数だった場合も3101万人と、初の3千万人超えは確実と見られる。

 政府はこのほど、台風21号や北海道胆振東部地震の際、外国人旅行者への情報提供が不十分だったとして、非常時の外国人旅行者の安全・安心確保のための緊急対策を決定。多言語対応のコールセンターや、災害情報を通知するスマートフォン向けアプリなどの機能や態勢を強化するとした。言葉が分からない外国人にとって、いざというとき頼りになるツールとなるだろう。

 米国の旅行雑誌の「旅行先として魅力的な世界の大都市ランキング」で東京が1位、京都が2位とワン・ツー・フィニッシュを飾った。日本が魅力的なデスティネーションであることに異を唱える人は少ないだろう。

 唯一といえるネックは多発する自然災害だ。もしものときも安心して滞在できる環境を整備すること。日本を世界に冠たる観光大国に押し上げるために、地方レベルでも欠かせない取り組みだ。

【森田淳】

 
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