【道標 経営のヒント 126】今年の目標 石井敏子


 明けましておめでとうございます。皆さまは清々しい新年を迎えたことと存じます。

 私は年末年始が1年で一番苦手。クリスマスが明け正月飾りと一晩でガラリと変わる上に、どこかせわしなく、1年の疲れも出て体調を崩しがち。お客さまが楽しい新年を迎えられるように準備に追われるのだが、三が日はもうぐったり。4日目ごろから宿も落ち着いてきてやっと自身のお正月となる。

 さて昨年を振り返ってみるとやはり「民泊」の勢いに押された1年だった。先日も行燈旅館最寄り駅である地下鉄日比谷線の三ノ輪駅周辺を散歩していると、外国人の家族連れがスマホを片手に目指すマンションに消えていった。こんな光景も日常となり、「ああここもなんだ」と、ため息が出てくる。きっかけは東京オリンピックで、「東京での客室数が足りない」で、あった。

 当初は留学生などのためのホームステイをイメージしていた方が多いと思うが、民泊ビジネスは「あれよ、あれよ」と、いう間に空き家大国日本の個人の投資家や不動産屋さんの絶好のビジネスチャンスと化した。昨年も1人あたりの客室単価が5千円(1部屋1万円)以下のクラスのお宿は大変な苦戦を強いられた。行燈旅館も例外ではない。この先オリンピックまでさらにホテルの数は増加傾向にあるので、それぞれ知恵を絞っていかなければならない。

 そこで「行燈旅館としては今年どうするか?」。

 スマホにキーボックスの解錠番号が送られてくるだけで、人との接触がゼロの民泊には決してできないサービス、そして、今日からでもできることといえば、「もっとお客さまに話しかける」。

 簡単なことのようだが、毎日同じ声掛けでは自分にとっても相手にとってもつまらない。しかし、英語、フランス語、イタリア語でとなると、あまりボキャブラリーもない私には結構大変なことだ。日本人のお客さまなら、おやじギャグもいくつか知っているので、笑わせることができるのだが、外国のジョークは難しい。

 アメリカ人にはアメリカ人のジョークがあるように、きっとヨーロッパの人にもヨーロッパの人に受けるジョークがあると思う。真剣に東京のどこかで各国の人に合わせて、旅の緊張を取り除き、話のきっかけになるジョークでも習う場所がないかと思っている。誰かそんな教室を東京で開いていないだろうか?

 コミュニケーションの場を増やし笑いを増やす。とかくハードインフラ面に目がいきがちだが、旅行者にとって旅館の朝食時、おいしいコーヒーを飲みながら見どころや食事場所の情報交換、そして宿でのイベントや、居酒屋、銭湯で地元の人と知り合えれば、旅の楽しさが倍加する。東京に英語で時代遅れな変なジョークを言う女将がいたら旅行者にとっても土産話になるだろう。

 今年は真剣に「レセプションに、ラウンジに、笑いあふれて旅、充実」を目指したい。

 
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