【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン396】成熟化時代の開発リニューアル戦略9 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に開発リニューアル融資を得るコツについて紹介しよう。国内の旅館・ホテルマーケットも、成熟化の兆候が見え始めてきており、金融機関も新たな貸し出しに対して慎重になりつつある。しっかりと説明できるよう裏付けを持って融資申し込みをしたい。

 13、不動産投資の考え方で資料を作る

 金融機関の担当者は、不動産投資に関する融資案件を数多く取り扱っている。旅館・ホテル業に詳しくない担当者であっても、不動産投資の着眼点や費用項目を盛り込んで資料を作ると理解してもらいやすい。

 投資総額は、建物の建築費だけでなく必要な項目は全てリスト化した方が良い。代表的なものは土地取得費用や建物建築費、設備工事費、FFE工事費、付帯設備費、設計監理費、消費税(建物付属設備)、建設中の固定資産税、解体工事費、不動産取得税(土地・建物)、登録免許税(土地・建物)、登記手数料、仲介手数料、建設中の金利、抵当権設定費である。

 必要に応じてテナント退去費用、プロジェクトマネージャー報酬、開業前人件費、開業準備室経費を盛り込むと良い。必要な資金調達額を具体的に把握できるだけでなく、金融機関に対して、しっかりとした計画であるというアピールにもつながる。

 収支は、利回り計算できるように、会計事務所で作成してもらった決算書や試算表を組み替えた方が良い。決算書や試算表から組み替えるならば、「営業利益+減価償却費―FFE準備金」で利回り計算に必要な純収益を計算することができる。例えば、投資総額が10億円、計画3年目の営業利益が5千万円、減価償却費3千万円、FFE準備金1千万円と仮定すると、年間純収益は7千万円、利回りは7%と計算することができる。

 業態によって異なるが、この数値が4%以下であると投資回収が難しい案件(利益に対して投資総額が過剰で魅力的でない案件)、12%以上であると投資回収が強気の案件(事業計画が楽観的すぎるのではないかと金融機関からチェックされやすい案件)と言えるだろう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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